2024.10.25
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控訴審で結論は変わるか(刑事編)

投稿者:池内優太
有罪

今回は、刑事裁判について、控訴審で結論が変わるものなのかというお話をします。

実は、判決後に控訴する割合は、民事事件の方が圧倒的に多いです。

なぜなら、民事事件は一審で和解することが多いからです。

和解できずに判決まで行ったという時点で、双方の「納得できる解決」の中身がかけ離れているわけですね。

なので、判決に対して少なくともどちらかは「全く納得できん」と思うことになり、控訴するわけです。

他方、刑事裁判の場合、そもそも「和解」なんてものがありません。

なので、全てが判決となり、ほとんどは、そのまま判決を受け入れます。

ただ、執行猶予になるかが微妙な事案で実刑になってしまったり、あと被告人が弁護人とはだいぶ違う思考回路の持ち主だったりした場合には、控訴となります(検察官控訴のパターンはここでは省きます)。

もちろん、そもそもが否認事件であり、有罪判決を受けてしまった場合も控訴になりますね。


さて、そうやって有罪判決を受けた被告人が控訴する場合にどれほど結論が変わるものか。

これも、統計データを見ているわけではないのですが、意外と変わります。

刑事裁判の控訴審で結論が変わるケースには、大きく2つのパターンがあります。


1、一審段階と状況が変わったので判決が変わるパターン

2、一審段階と状況が変わらないのに判決が変わるパターン


それぞれについて説明します(なお、否認事件で控訴した結果無罪になるパターンは後述します)。

1は、わかりやすくいえば、一審係属中には成立していなかった被害者側との示談が成立したようなケースですね。

一審では、示談(被害弁償)ができていなかったので、被害が回復されていないことを前提にした判決になります。

ところが、控訴して控訴審の審理をするまでの間に示談がまとまることがあるんですね。

こうなると、控訴審では被害回復がなされたという状況を踏まえて判決をするので、一審から判決内容が変わることが多いです。

最近だと「頂き女子りりちゃん」とか呼ばれている人の控訴審がこのパターンで少し刑期が短くなったりしてました。

まあ、あの事件の場合は、頂き女子から金を受け取っていたホストが被害者に一部弁償したことが理由とのことで、被告人(頂き女子)本人が何かしたわけでもないのでちょっと特殊なケースではあります。

話を戻しますと、要は一審とは状況が変わると控訴審で判決が変わることは珍しくないのです。

では2はどういうことか。

これは、単純に控訴審の裁判官が「一審は少し厳し過ぎんか」と考えて結論を変えてくるパターンですね。はっきりいってレアケースです。

ただ、私が過去に経験した事件で、一回だけこのパターンがありました。

人身事故を起こして刑事裁判になり、被害結果が重大だったこともあって実刑となってしまったのですが、事故の背景には明らかに病気の形跡がありました。

そこで、控訴審で医師の証人尋問を行い、事故が病気に起因した可能性が高いこと、この病気を事前に自覚することがいかに難しいかを証言してもらった結果、控訴審では執行猶予がついたというものです。

なかなかお医者さんに証言台に立ってもらうのは難しいのですが、病院に行きお願いしたところ快く引き受けてくださり、結果も結果だったのでとても印象に残っています。


あとは、否認事件で一審有罪だったものが、高裁で無罪に転化するパターンもあります。

これには、新証拠が出てきたケースと、従前の証拠に対する評価が一審の裁判官と控訴審の裁判官で分かれたケースがあります。

ただし、刑事事件では、基本的に一審で出していない証拠を控訴審で出すことはできず、提出のためには「やむを得ない理由」が必要になります。そういう意味では、一審での活動が非常に重要です。

なお、刑事事件でも、控訴審までが同じ結論だった場合に最高裁で覆すのは困難です。

特に刑事事件は、裁判が始まる前の、捜査の初期段階での対応が最も大切になってくるので、身内の方が逮捕された場合などはすぐに弁護士に相談されることをお勧めします。

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