2026.03.06
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遺産分割の場面で問題になりがちな「葬儀費用の負担」について

投稿者:二川伸也
osoushiki_shinpai 2026年3月6日

弁護士の二川です。


今回は、相続・遺産分割の場面でよくご相談いただく「葬儀費用の負担」について解説します。


【遺産分割】葬儀費用は誰が払う?相続でよく起きるトラブルと対処法
親が亡くなった後、葬儀を終えてほっとしたのも束の間、「葬儀費用って誰が出すの?」と兄弟間でもめてしまった——そんなご相談が、相続の場面では非常によく寄せられます。
実は、葬儀費用の負担については法律に明確なルールがなく、状況によって取り扱いが変わります。「遺産から払えばいいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、それが必ずしもできるわけではないのです。
今回は、遺産分割における葬儀費用の扱いについて、わかりやすくご説明します。


1.葬儀費用は遺産から払えないの?
結論から言うと、原則として葬儀費用は遺産(相続財産)から支出することができません。
法律(民法885条)上、「相続財産に関する費用」は相続財産から支出できるとされていますが、葬儀費用はここに含まれないと考えられています。
ただし、次の2つのケースに当てはまる場合は、相続人全員で分担することが可能です。
・亡くなった方が生前に葬儀会社と契約していた場合
・相続人全員の間で、葬儀費用の負担について合意があった場合


2.ケース① 生前に葬儀会社との契約があった場合
亡くなった方が生前に葬儀会社と「自分の葬儀」に関する契約を結んでいた場合、その費用は相続債務に準じて扱われます。

相続人はこの契約を引き継ぐことになりますので、葬儀費用は相続人全員が法定相続分に応じて負担することになります。
例えば、子ども2人が均等に相続する場合は、葬儀費用も2人で折半することになります。
「終活」として自分の葬儀を事前に手配しておく方が増えていますが、こうした契約は費用負担をめぐるトラブルを防ぐためにも有効です。


3.ケース② 相続人全員が話し合いで合意した場合
生前に契約がなかった場合でも、相続人全員が話し合い、「葬儀費用は遺産から出す」あるいは「みんなで分担する」と合意すれば、その内容に従って処理することができます。
逆に言えば、全員の合意がなければ、葬儀費用はその費用を実際に払った人(喪主など)が負担するのが原則です。


4.具体的な例で考えてみましょう
父Aさんが亡くなり、相続人は長男Yさんと二男Xさんの2人。Xさんが喪主となり葬儀を執り行い、費用300万円を全額支払いました。Xさんは「費用の半分をYさんにも負担してほしい」と考えています。
このケースでXさんがYさんに請求できるかどうかは、次のどちらかに当てはまるかどうかで決まります。
・亡くなったAさんが生前に葬儀会社と契約していた
・Yさんが費用を半分負担することにYさん自身が合意していた
どちらにも当てはまらなければ、残念ながらXさんの請求は認められません。喪主が費用を負担するというのが法律実務上の原則的な考え方だからです。


5.「喪主だから全額負担」とは限らないケース
なお、喪主であれば必ず全額負担しなければならないわけではありません。
裁判例(東京地判平成31年2月1日)では、長男と次男がともに葬儀の内容決定に関与し、次男(喪主)が「遺産から払おう」と提案していたケースで、2人が共同で葬儀を主宰したと認定され、相続割合に応じて費用を分担するよう判断されました(だいぶ端折って説明しています。)。
形式的に喪主でなくても、実態として関与していれば費用を分担すべきと判断されることがある、ということです。


6.お香典はどう扱われるの?
葬儀にあわせて寄せられるお香典は、「祭祀の主催者や遺族への贈与」と考えられており、遺産分割の対象にはなりません。
ただし、相続人全員が「香典を葬儀費用に充てる」と合意した場合は、実質的に遺産分割の場で調整することも可能です。


【まとめ】
葬儀費用は原則として遺産から支出することができず、喪主が負担するのが基本です。ただし、生前に葬儀会社との契約があった場合、または相続人全員の合意がある場合には、相続人全員で分担することが可能です。
葬儀費用のトラブルは相続人同士の感情的な対立を生みやすく、後の遺産分割全体にも影響することがあります。「誰がどう負担するか」を事前に話し合っておくこと、または故人が生前に準備しておくことが、最善の予防策です。
「相続のことで困っている」「早めに整理しておきたい」とお悩みの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。


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