2024.10.11
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控訴審で結論は変わるか(民事編)

投稿者:池内優太
不当判決

日本は三審制であることは皆さんご存じかと思います。

地裁→高裁→最高裁

このように、地裁の判決に不服があれば高裁に、高裁の結論に不服があれば最高裁に、それぞれ上訴することができます。

この上訴に関して、こう思ったことはありませんか?

「第一審だって裁判官が証拠を吟味して判決を書いているのに、その結論が変わることなんてそんなにあるのか?」

結論としては、結構あります。 私の体感で4割以上は変更になります(私自身が、結論が変わりそうな場合にしか控訴を勧めないせいかもしれませんが。)。


個人的には、控訴審で結論が変わるケースには4つのパターンがあると思っています。

1、一審の裁判官がうっかりしてた

2、一審(または控訴審)の裁判官が変わり者だった

3、そもそも事案がきわどかった

4、新しい証拠を提出した


1は、当事者の主張や提出された証拠を裁判官が見落として、そのまま判決になってしまったパターンです。

ちゃんと読み手(裁判官)に伝わるように書面を書き、証拠を提示するのも弁護士の仕事なので、このパターンの半分は弁護士の責任だと思います。

但し、いつぞや簡裁で当たったあの裁判官&司法委員の件(※5/7ブログ「『和解』とは何か」参照)は100%裁判所側の責任です

最終的に勝ったからいいけど、あれは絶対にゆるさない。


2は、あまり言いたくありませんが「変な考え方」を持った裁判官に当たってしまったパターンです。

ひとつ、実際に経験した事例を挙げます。

AさんがBさんに繰り返し多額のお金を貸したのに返されないので訴訟にした事件です。

提出した証拠(メール)から、繰り返し返済を迫るAさん、それに色々言い訳を並べて「待ってほしい」と粘り続けるだけでなく、あろうことかさらに重ねてAさんにお金を貸してくれと頼むBさんの姿が浮き彫りになっていました。

なのに、2人が若い上、貸し借りしたとされる金額が大きすぎるというだけで「金銭の貸し借りがあったとは認められない」という全部棄却判決を書かれたことがありました。

あれは本当にびっくりしました。

数百通に及ぶあのメールのやりとりを見て、この2人の間に貸し借りがなかったという認定は非常識というほかなく、案の定、控訴審であっさり覆りました。

まあ、変わった人というのはどこにでもいるもので、それは裁判官とて例外ではないということです。ただ、当たってしまうと苦労します。


3は、客観的にみてどっちの主張が真実なのかわからないというパターンです。

証拠の評価によって結論が左右されるため、控訴審で別の裁判官が見た結果、一審から結論が変わることがあります。

ありそうでないケースですね。なんだかんだ言って、一審で証拠と主張を出し尽くせば大方結論は見えてくるものなので。


4は、民事事件ではあまりお目にかかりませんが、一審の時点では提出していなかった新たな証拠を控訴審で提出した結果、結論が変わるパターンです。

普通、一審の段階で出せる証拠は出し尽くすので、たまたま一審判決後に新証拠が発見されたか、一審の時点ではそれが証拠になると思っていなかったけど、控訴する段階でよく検討したら「これ使えるじゃん」となるようなケースですね。

ただ、私自身はこれを民事で経験したことはありません。


さて、こうやって書くと、裁判は3回のチャンスがあり、どこで結論が変わるかわからないと思われるかもしれません、

そう思った方に声を大にして申し上げたいことがあります。


上告審(最高裁)で結論が覆ることは、ほぼありません。


長くなったので理由は省きますが、実質的には控訴審までの2審で決着がつくと考えてください。

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