2024.09.02
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印象操作

投稿者:池内優太
麻雀

我々は、裁判で主張を戦わせるとき、あえて嘘を書くことはありません。

もしかしたらやる人もいるかもしれませんが、リスクとリターンが見合わないので、まともな弁護士ならまずあり得ません。

ですが、裁判官も人間ですので、迷ったときにイメージの悪い方に若干不利な和解案を出すことは考えられます。

そういう状況に備え、印象操作をすることはあります。

相手の印象を悪くする事実を証拠付きで具体的に主張し(もちろん、事件の帰趨に関係するものに限ります)、こちらの印象が悪くなる事実はわざわざ書かない、あるいはやむなく書く場合でも簡潔にといった具合です。

このように言うとせこい話のように聞こえますが、依頼者にとってメリットがあり、弁護士倫理に反しないのであれば何でもやります。

ただ、印象操作にはルールとコツがあります。

そのルールとは「嘘をついてはいけない」こと。

コツは「具体的な話をすると説得力が増す」ということです。


このルールとコツに従った印象操作に関する具体例を出します。

ある男性Aと交際している女性Bがいるとします。

Bさんは、交際相手のAさんのことについて両親や友人から質問を受けました。

Aさんはどんな人?趣味は?・・・と。

まあよくある話ですよね。

Aさんの趣味は「競馬」「麻雀」「ビールを飲むこと」だったとします。

これもよくある話ですね。10人の男性がいたら7~8人は該当するはずです。

さて、この時、Bさんはどのように答えるべきか。

それは、BさんがAさんとの交際を

①「周囲に応援してもらいたい」のか

②「正直別れたいので、相手を下げて自分を上げておきたい」のか

によって変わってきます。

②であれば、誠に遺憾ながら、Aさんの趣味をそのまま答えればおそらく目的は達せられます。

では①の場合はどうするか。

Aさんの趣味をそのまま答えた後で「でもいい人だよ。」「優しいよ。」というふんわりしたフォローを続けたところで、ご家族やご友人にはあまり響かないでしょう。

むしろ、ろくでもない男に丸め込まれているような気さえして心配になりませんか。

でも、嘘をついてはいけないというルールがあるので、趣味を聞かれて「映画鑑賞」などと答えてはいけません。

ここでAさんの印象を良くするコツは、単に「いい人アピール」をするのではなく、そこをより具体的にすることです。

「でも、仕事はしっかりしていて稼ぎも貯えもあるし、誕生日には旅行に連れて行ってくれるし、ふだん何気なく話したことをよく憶えていて、記念日にはサプライズプレゼントをしてくれるし・・・」

このくらい具体的なエピソードを添えてやると、だいぶ印象が変わります。

逆に、競馬や麻雀、酒にどハマリしているエピソードを具体的に語ったらどうなるか。言わずともわかりますよね。

どちらも決して違う内容を話しているわけではないのですが、与える印象は大きく変わります。

でも、こんなことは意識しなくても皆さんが日常会話の中で普通にしていることだと思います。

裁判でも、意識的にではありますが、同じようなことをするという話でした。


なお、上記は架空の事案であり、Aさんは実在の人物とは一切関係ありません。本当です。

念のため申し添えますと、私自身は競馬と麻雀を趣味としており、ビールについては人後に落ちない見識を備えていると自負しております。

それらを通じた友人も多く、決してこれらを貶めるつもりはありません。

これらを趣味としていない方々からの評判が、往々にして芳しくないことは自覚していますが・・・。

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