2024.07.02
ブログ

「後遺障害」って何なのさ(2)

投稿者:池内優太
ケガをした犬

前回のブログでは、後遺障害の定義や、それが認められた場合にどうなるのかについてお話ししました。

今回は、「判定は中立公正なのか」や「判定に不服があったらどうするのか」についてお話しします。


4、判定は中立公正なのか

真実はわかりませんので、以下の情報から推察するしかありません。

・後遺障害の判定を行う「損害保険料率算出機構」は会員制の組織であり、会員による会費で運営されています。

・会員は、主に民間の損保会社です。

・組織の理事にも民間の損保会社の社長が名を連ねます。

・民間の損保会社は、後遺障害が認定されると支払う保険金が跳ね上がります(つまり、損をします)。

・労災による後遺障害(等級の認定基準は基本的に交通事故と同じ)は、交通事故の後遺障害に比べ認定確率が高いです。

労災と交通事故が重複するケース(通勤中の交通事故など)で両方の判定を受けると、特に低い等級については「労災では認定が出たけど自賠責では非該当になった」ということが多く、逆はほぼ聞きません(少なくとも私が担当した事件では1件もありません。)。


中立公正でないと断ずるつもりはありませんが、何のバイアスもないと考えるには偏りがあるなあ、というのが、交通事故に携わる一弁護士の所感です。


5、判定に不服があったらどうするのか

まずは異議申立てを行うというのが一般的です。

一次審査よりも慎重な判定をしてくれますので、結果が覆ることもありますし、結果が覆って後遺障害の認定が下りればそれを基に示談交渉ができます。

ただ、異議申立てをしても結果が変わらなかったり、そもそも異議申立てに適さないケースでは、裁判にして裁判官に認めてもらうしかありません。

異議申立てをしても結果が変わらなかったケースでも、各種証拠から、裁判官が後遺障害の認定をすることがあります。

異議申立てに適さないケースというのは、客観的にみて後遺障害の等級認定の基準を満たさないけど、何の後遺障害もないというにはかわいそうな事案です。

たとえば、本来180度動くはずの肩関節が90度以内しか動かないとなれば、10級の後遺障害になります。

90度動くけど135度以内しか動かない場合には12級となります。

では、95度しか動かない場合は?

基準に照らせば12級です。しかし、130度くらい動く人と全く同じ慰謝料、逸失利益でいいのか?という素朴な疑問がありますよね。

動く幅だけで見れば、12級よりは限りなく10級に近いといえます。

こういう場合に、その他の部位の障害などから総合的に考えて「実質10級だよね」といったファジーな判断をしてもらおうとしても、異議申立てではそれは望めません。自賠責損害調査事務所の判定は、あくまで基準を満たしているかいないかによって行われるからです。

なので、こういうケースは異議申立てには適しておらず、訴訟を起こして裁判官に認定してもらうことを目指す方が可能性があるといえます。


そのほか、後遺障害の認定を巡っては、医師に意見書を作成してもらったり、通院・リハビリの段階から、後に控える後遺障害判定を見越した検査を受けておくことがしばしば有益になります。 症状は残っているのに後遺障害として認められないというのは、非常にもどかしく悔しい気持ちになりますので、交通事故で重い症状を負った方は、早期に弁護士に相談されることをお勧めします。

ブログ一覧へ戻る

NEW

カテゴリ

サブカテゴリ

ARCHIVE