2024.03.28
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焦った話(2)

投稿者:池内優太
男性・走る

前回のブログ(焦った話(1))では、人生のかかった司法試験本番で、試験開始30分前になって別会場に向かっていたことに気付き、急いで電車を乗り継いで会場の最寄り駅までたどり着いたことをお話しました。


試験開始:13:30 現在時刻:13:25

客観的に見てほぼ詰んでいますが、まっすぐ走って向かえばまだわかりません。

ここで、私が中央大学に行ったことがない(=道がわからない)という現実が立ちはだかります。

学生っぽい人を捕まえて道を尋ねます。恥も外聞もありません。

「そこの交差点を左折してまっすぐ」 彼は指さして教えてくれました。

なんとシンプルで無駄のない、美しい回答でしょうか。

回りくどい話をしつつ、肝心の質問にだけは決して答えない議員連中は彼の全身の垢を直飲すべきです。

検索した限り、駅からは近かったはず。まっすぐの道なら、なんとか間に合うか。

そんなことを思い交差点を左折した私の目に飛び込んできたのは





まっすぐ伸びる見事な上り坂でした。

伝わりますかね、これ。なかなかの傾斜です。

小脇に抱える、苦楽をともにしてきた参考書類を投げ捨てたい衝動と闘いながら走り抜け、汗だくになって校門にたどり着きます。

そこには、受験生の案内を終えて談笑する係員たちの姿がありました。

私を見つけると、彼らの表情が一瞬にして驚嘆の色に染まります。

「受験生の方ですか!?早く早く!間に合わない!」

試験開始時刻に試験会場内に存在すること、それが受験の条件。

とにかくどこかの教室内にいてくれと手を引かれ、入口から一番近い大教室に放り込まれました。

100名以上の受験生が、今まさに問題用紙を開披せんと固唾を呑む空間に、突如、汗だくで息を切らせた男が運び込まれたのです。

集中を乱された彼らの、殺意に満ちた眼差しを誰が咎められましょうか。

袋叩きに遭わなかっただけまだ文明的です。

こんな人間は俺くらいだろうと思っていると、なんと試験開始の合図とほぼ同時に、もう一人、女性が倒れ込むように入室しました。

ように、というか実際に倒れ込んで私の足元で「く」の字になっていました。

(私はすぐにでも自分の会場に向かいたいのですが)なぜかその女性の回復を一緒に待ってから、それぞれの本来の受験会場に案内されます。

先に女性を教室に案内して、今度は私の教室に向かって…いたはずなのですが、係員の人が突然 「あ、間違えたこっちでした」 と言って踵を返すものだから焦ります。

やっと自分の教室、座席を案内され、試験開始です。 既に、開始時刻を15分近く過ぎています。

本来の試験時間は3時間半。この時間内に60問を解く必要があります。

1問あたり3分半。15分で約4問分のハンデです。

しかも、よりによって最初にとりかかった問題で手こずり、6分近くを消化してしまいました。

さすがに終わったわ…と半ば覚悟しながら解き進めていたところ、勉強の成果なのか、諦めの境地がもたらした集中力のおかげなのか、残り15分を余して普通に解き終わりました

全体の260位という好成績で択一試験を突破し、この騒動は幕を下ろしたのです。

その後、二次試験(論述式試験)であえなく不合格となり、この年の受験生生活も幕を下ろしたのはそれから4か月後のことでした。


この試験日のできごとは、長らく私の中で「人生で焦ったことランキング」1位の座に君臨し続けたのでした。

そう、あの日までは。

~焦った話(3)に続く~

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