2024.03.15
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焦った話(1)

投稿者:池内優太
男性・焦る

「慌てたり、うろたえたりする姿が想像できない」



過去、何人もの人にそう言われました。

たいてい「落ち着いてるよね」という趣旨の言葉が続きます。そんなに褒めないでください。

たまに「血が通ってるとは思えない」という趣旨の言葉が続きます。私あなたに何かしましたかね。

仕事柄、狼狽する姿を表に出さないように努めている部分はありますが、確かに、そもそも本気で焦ることは少ないです。

ですが、今でもはっきり思い出せるほど焦ったことがあります。



あれは、私が大学を卒業した直後の5月でした。

その日は司法試験(旧制度・択一式)の試験当日。

大学3年時から受験すること3回目、ここで受からなければ一浪してロースクールに入学し、新司法試験を受験しようという勝負の年です。

当時の択一式試験は、受験者のうち9割が落ちるというそれなりに狭き門でしたが、模試の結果等から、まず間違いなく受かるだろうという手ごたえがありました。

あとは体調を整え、受験するだけです。

そう、受験するだけ。

受験票は何度も確認しました。

試験会場は昨年と同じく早稲田大学理工学部校舎。

本部校舎にしてくれればいいのにと思いながら、当日、高田馬場駅から会場まで歩いていました。

試験開始は13:30。

13時前に試験会場近くの総合体育館前にさしかかり (会場のトイレは混んでいるので、ここで済ませていこう) と思い、用を足します。

冷静です。

改めて受験票を確認します。 ちゃんとある。

しかし、何かが引っかかります。

試験会場、間違いなく理工学部校舎だよな?

昨年と同じ会場、間違えるはずはない。

しかし・・よくよく見ると・・・受験票に記された文字列が・・なんか・・・・違わないか・・・・・・











「試験会場:中央大学理工学部校舎」














よつば法律事務所



血の気が引くというのは、ああいうことを言うんですね。

一瞬で頭がクラクラし、目の前がチカチカしました。

夢?これは夢じゃないのか?

え、うそ、これで終わるの?

あれだけ勉強してきたのに?

なんで今まで気付かなかったの?

色々なことが頭を駆け巡りながら、高田馬場駅に向かってダッシュです。

走りながら、中央大学理工学部校舎とはどこにあるのかを検索します。

最寄駅は地下鉄丸ノ内線の後楽園駅。 高田馬場からは、2つ隣の池袋で乗り換えて3駅先。

発車ベルのなるホームを駆け抜け、山手線に飛び込みます。

時刻は13:05。 試験開始は13:30。

接続次第では間に合うか? 降りてからの距離はどのくらいだ?

数百メートルを全力ダッシュして息切れした22歳は、手足をガクガク震わせながら思考を巡らせます。

後楽園駅に着いて改札を抜けると、時計は13:25。試験開始まであと5分です。


~焦った話(2)に続く~

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