「夫が亡くなり、相続人は私(妻)と息子の2人です。息子には知的障害があり、私が成年後見人になっています。私が息子の代わりに遺産分割の手続きをすればよいのでしょうか」——高松市周辺でも、このようなご相談をいただくことがあります。
成年後見人と成年被後見人が共に相続人となる場合、成年後見人が被後見人を代理して遺産分割協議を行うことは法律上できません。利益相反が生じるからです。「特別代理人」の選任が必要です。
成年後見人は被後見人の代理で遺産分割に参加できません
母と息子が共に相続人である場合、どちらが多く取得するかによって利益が相反します。成年後見人である母が息子の代理人として協議に参加すれば、自分に有利な内容にしてしまうおそれがあります。このため、この遺産分割は「利益相反行為」にあたり、成年後見人が被後見人を代理することは認められません。
解決策として、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申立て、選任された特別代理人が成年被後見人を代理して遺産分割協議に参加します(民法860条・826条)。
特別代理人が必要なケース・不要なケース
後見人と被後見人が共に相続人のとき
双方が遺産を取り合う立場にあるため、利益相反が生じる。後見人は被後見人を代理できないため、特別代理人の選任が必要。
後見監督人が選任されているとき
後見監督人が選任されている場合は、後見監督人が成年被後見人を代表するため(民法851条4号)、特別代理人を改めて選任する必要はない。
📌 実務上のポイント:実務では、遺産分割協議の内容が実質的に固まった後で、遺産分割協議書(案)を添付して特別代理人選任の申立てをすることが多いとされています。申立前に家族間で分割内容を話し合っておくことが円滑な進行につながります。
特別代理人選任から遺産分割までの手順
遺産分割協議書(案)を作成する
申立てには利益相反の内容と遺産分割の案を示す資料が必要。まず家族間でどのような内容で分割するかを確認し、協議書案を作成しておくと手続きがスムーズ。
特別代理人選任の申立て
後見開始の審判をした家庭裁判所へ申立て。申立人は成年後見人(民法860条・826条)。申立費用は収入印紙800円と予納郵便切手。成年被後見人・成年後見人の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票、遺産分割協議書(案)などを添付する。
特別代理人が成年被後見人を代理して遺産分割協議に参加
選任された特別代理人が被後見人の利益を守る立場で協議に参加。協議書の署名欄には「相続人〇〇特別代理人〇〇」と記載し、特別代理人の実印を押印する。
遺産分割協議書の完成・各種手続き
各相続人および特別代理人の印鑑登録証明書・特別代理人選任審判書を添付して、不動産の相続登記・預貯金の払戻し等を行う。法定相続分を超える部分については登記を備えることが対抗要件となる(民法899条の2第1項)。
成年後見人がまず自らの相続放棄を行った後、または同時に、成年被後見人を代理して相続放棄を行う場合は、利益相反にはあたらないとされています(最高裁判決・昭和53年2月24日)。この場合は特別代理人を選任せずに手続きを進めることができます。
ただし、相続放棄は遺産を一切取得しないことになるため、遺産の内容や家族の状況を踏まえて慎重に判断する必要があります。
自分で進める場合と弁護士に依頼する場合の比較
成年後見人と被後見人が共に相続人となるケースは、利益相反の確認や申立書類の準備など、複数の法的判断が必要です。以下の表を参考にしてください。
| 比較項目 | 自分で手続き | 弁護士に依頼 |
|---|---|---|
| 利益相反の判断 | 特別代理人が必要かどうか判断が難しい | 状況を確認し、必要性を正確に判断 |
| 協議書案の内容 | 被後見人の利益を適切に守った内容か判断が難しい | 法定相続分を踏まえた適切な案を設計 |
| 後見監督人の確認 | 後見監督人がいれば特別代理人不要と知らない場合も | 監督人の有無を確認し最適な方法を提案 |
| 相続放棄との比較 | 放棄で利益相反を回避できることを知らない場合も | 状況に応じた最適な選択肢を提示 |
| 申立書の準備 | 書類収集・記載に手間がかかる | 申立書から添付書類まで一括サポート |
| 費用 | 申立費用(印紙代800円+郵便切手)のみ | 弁護士費用が別途必要(内容により異なる) |
まずは、よつば法律事務所にご相談ください
「成年後見人の自分と息子が共に相続人になり手続きが進められない」「特別代理人の候補者が見つからない」「協議書案の内容が被後見人にとって適切か不安」——そのようなお悩みは、ぜひ弁護士にご相談ください。特別代理人選任の申立てから遺産分割協議書の作成まで、よつば法律事務所がトータルでサポートいたします。
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