2026.04.07
コラム

事業承継における特例

投稿者:二川伸也

事業承継で遺留分トラブルを防ぐ「民法の特例」とは?弁護士が手続きの流れを解説|よつば法律事務所

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事業承継で遺留分トラブルを防ぐ方法がある
「経営承継円滑化法」の民法特例とは?

長男に事業用資産を贈与したら、他の子どもに遺留分を請求される──そんな心配を法律の力で解消できる制度があります。手続きの流れと使い方を解説します。

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。

個人事業を子どもに引き継がせたい。でも、後継者に事業用の土地・建物などをまとめて贈与すると、他の子どもから「遺留分を侵害している」と相続時に請求されるのでは…と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、そのような懸念に対応するための制度が存在します。「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」に定められた民法の特例(以下「民法特例」)です。この制度を活用すれば、後継者に贈与した事業用資産を遺留分の計算から除外できる場合があります。

民法特例とは何か──遺留分の問題をあらかじめ解消する仕組み

通常、経営者が後継者に事業用資産を生前贈与すると、その贈与財産は遺留分の計算基礎に含まれます。その結果、他の相続人から「遺留分を侵害している」と請求されれば、後継者は事業資産を手放さなければならない事態になりかねません。

民法特例は、推定相続人全員と後継者とが合意したうえで、経済産業大臣の確認・家庭裁判所の許可を得ることにより、事業用資産を遺留分の計算から除外(または価額を固定)できる制度です。事業の基盤を守り、円滑な承継を実現するために設けられています。

個人事業者が使える「除外合意」──対象資産と要件

個人事業の承継の場合、活用できるのは主に除外合意(贈与した事業用資産の価額を遺留分算定の基礎財産に算入しない旨の合意)です。なお、会社承継の場合に認められる「固定合意」(価額を合意時点に固定する合意)は、個人事業の承継には利用できません。

「旧個人事業者」の要件

旧個人事業者に該当するための条件
  • 3年以上継続して事業を行っていた個人の中小企業者であること
  • 不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業は対象外
  • 事業用資産の全部を後継者となる者に贈与していること

除外合意の対象となる「事業用資産」の種類

資産の種類 主な要件
土地・土地上の権利 贈与直前に事業の用に供されていたこと。建物・構築物の敷地であること。棚卸資産に該当しないこと
建物 贈与直前に事業の用に供されていたこと。棚卸資産に該当しないこと
減価償却資産 地方税法の「償却資産」・営業用自動車・租税特別措置法施行規則所定の減価償却資産には該当しないこと

また、対象資産は、贈与を行った年の前年分の事業所得にかかる青色申告書の貸借対照表に計上されているものに限られます。

手続きの流れ──3ステップで効力が生じる

民法特例は、当事者間の合意だけでは効力が生じません。以下の3段階の手続きを経る必要があります。

1

推定相続人全員と後継者による合意書の作成
旧個人事業者の遺留分を有する推定相続人全員と後継者が、除外合意の内容・後継者が資産を処分した場合に非後継者が取り得る措置・衡平を図るための措置などを書面で合意します。全員の署名捺印が必須です。
2

経済産業大臣への確認申請
後継者が、合意書・確認申告書・旧個人事業者の確定申告書(3年分)・戸籍謄本・認定支援機関の確認書などを添付して、経済産業省(中小企業庁)または管轄経済産業局に提出します。
⏱ 合意日から1か月以内
3
家庭裁判所への許可審判の申立
経済産業大臣の確認証明書・合意書の写し・戸籍謄本等を添えて、旧個人事業者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立を行います(収入印紙800円)。裁判所が「当事者全員の真意に基づく合意」と認めた場合に許可審判が出されます。
⏱ 経産大臣の確認を受けた日から1か月以内

⚠️ 重要:経済産業大臣の確認申請や家庭裁判所への申立を行う前に、後継者が死亡した場合、その相続人はこれらの手続きを引き継ぐことができません(経営承継円滑化法7条4項・8条3項)。健康状態や時期を考慮した早めの対応が重要です。

自分で進める場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 自分で対応 弁護士に依頼
制度の適否判断 要件が複雑で誤りやすい 適用可否を正確に判断
合意書の作成 記載漏れ・不備で無効になるリスク 法的に有効な書面を作成
推定相続人への説明・調整 感情的対立が生じやすい 中立的立場での合意形成をサポート
経産大臣への申請 添付書類の収集・記載が煩雑 書類収集から申請まで代行
家庭裁判所への申立 審判書の記載に法的知識が必要 申立書作成・裁判所対応を代行
期限管理 1か月の期限を失念するリスク スケジュール管理で期限内に完了

高松市周辺でも、親族間で円滑に事業を承継するための準備を早めに始めたいというご相談が増えています。この民法特例は推定相続人全員の合意が前提となるため、家族間の関係が良好なうちに、弁護士を交えて丁寧に進めることが成功の鍵です。

相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。

事業承継の遺留分問題、早めのご相談が安心への近道です

民法特例の手続きは、合意書の作成・確認申請・家庭裁判所への申立と、複数のステップを期限内にこなす必要があります。一つひとつを正確に進めるためにも、早い段階から弁護士と連携することをお勧めします。

よつば法律事務所では、香川・高松の弁護士として、個人事業者の事業承継から遺留分対策まで、ご家族の実情に寄り添った解決策をご提案いたします。まずはお気軽にお電話ください。

※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

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