2026.04.07
コラム

負担付遺贈のトラブル

投稿者:二川伸也

「不動産を遺贈する代わりに生活費を払え」という遺言。息子が払わない場合の対処法を弁護士が解説|よつば法律事務所

Burden-Attached Bequest & Cancellation

遺言で「不動産を遺贈する代わりに生活費を払え」と定めたのに、息子が一円も払ってくれない。どうすればいい?

「負担付遺贈」を承認したのに義務を履行しない受遺者への対処法を、弁護士が手続きの流れとともに解説します。最終的には遺言の取消しも可能です。

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。

「夫の遺言に『長男一郎に不動産を遺贈する。ただし一郎は私(妻)に毎月5万円を15年間支払うこと』と書いてあった。息子は遺贈を承認して不動産の登記も済ませたのに、生活費を一度も払ってくれない」

このような「負担付遺贈」をめぐるトラブルは、実際に起こりえます。遺産を受け取った上で義務を果たさないというのは許されません。法律は、相続人から受遺者への催告・さらには遺言の取消しという手段を認めています

「負担付遺贈」とは何か──構造を理解する

受遺者(息子)が得るもの
不動産など遺贈の目的物
受遺者(息子)が負う義務
遺贈の目的の価額を超えない範囲で
負担した義務を履行する責任(民法1002条1項)

受遺者が負担付遺贈を承認した場合、遺贈の目的物の価額を超えない限度において、負担した義務を履行する責任を負います。本事例では不動産を得た息子に、毎月5万円×15年間(計900万円)の支払義務が発生しています。

負担付遺贈の義務履行は、遺言の取消しによる解決だけでなく、直接の履行請求・強制執行も可能です(民法414条1項・民事執行法22条)。まずは確実な手続きを踏んで権利を実現することが大切です。

権利を守るための2つのステップ

1

相当の期間を定めた催告書を送付する
相続人は受遺者に対し、相当の期間(例:14日以内)を定めて負担義務の履行を催告することができます(民法1027条前段)。この催告は次のステップ(遺言の取消し申立)のために必ず必要です。内容証明郵便で送付し、到達日を記録に残しましょう。催告書には①負担付遺贈の内容、②未履行であること、③期限内に履行がなければ遺言の取消しを申し立てる旨を明記します。
⏱ まずここから着手
2
相当期間内に履行がなければ→家庭裁判所に遺言取消しの審判を申し立てる
催告した相当期間内に履行がないときは、相続人は家庭裁判所に対し、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを請求できます(民法1027条後段)。申立先は相続を開始した地を管轄する家庭裁判所で、収入印紙800円が必要です。審判が下されると、受遺者は取得した財産(不動産等)を相続人に返還しなければなりません。
⏱ 催告後、相当期間経過後に申立て

受益者(相続人以外)からも履行請求できる?

東京地裁平成30年1月18日判決は、負担付遺贈の受益者(遺言者の相続人でない者)も、民法537条2項の類推適用により、受遺者に対して負担の履行請求権を取得できると判示しました。ただし、受遺者が遺贈を承認していることが前提となります。

遺言取消しの審判が下される前に確認すべきこと

「やむを得ない事情」があると認められると取消しが認められないことも

仙台高裁令和2年6月11日決定では、受遺者が「今後も一切履行しないわけではなく、義務の内容が定まれば履行する意思がある」などの事情があるとして、遺言の取消しを認めませんでした。遺言取消しの審判を申し立てる際は、受遺者の不履行が責めに帰すことができない特段の事情がないかどうか、慎重に事実関係を整理することが重要です。

⚠️ 遺言作成時の注意点:負担付遺贈を遺言に盛り込む際は、「負担の内容」「支払期日」「支払方法」を可能な限り具体的に記載しておくことが重要です。抽象的な文言では、義務の内容自体が争われるリスクがあります。また、担保設定や公正証書遺言の活用も不払いリスクの軽減に有効です。

自分で進める場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 自分で対応 弁護士に依頼
催告書の作成 記載事項の漏れで後の申立てに影響することも 法的効力のある催告書を内容証明郵便で送付
履行請求・強制執行 債務名義の取得方法がわからない 訴訟・調停で債務名義を取得し強制執行まで対応
遺言取消しの審判申立 申立書の書き方が複雑で記載漏れが生じやすい 必要書類を揃えて的確な申立書を作成
「やむを得ない事情」の評価 見落としやすく、申立てが却下されるリスク 事実関係を整理し、審判の見通しを判断
即時抗告への対応 受遺者から抗告された場合の対応が困難 抗告審での主張・立証を一貫サポート
費用(目安) 収入印紙800円+実費 着手金+報酬金(事案により異なります)

高松市周辺でも、負担付遺贈の義務不履行をめぐる相談を受けることがあります。「催告はしたが無視された」「遺言の取消しを申し立てたいが手続きがわからない」という場合には、早めに弁護士にご相談ください。

相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。

負担付遺贈のトラブル、よつば法律事務所にご相談ください

「遺言どおりに動いてくれない」「催告書の書き方がわからない」「遺言を取り消したい」──どのようなお悩みでも、まずはご状況をお聞かせください。

よつば法律事務所では、香川・高松の弁護士として、遺言・遺贈に関するあらゆるトラブルに対応しています。お気軽にお電話ください。

※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

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