2026.04.07
コラム

遺留分侵害額請求の手続

投稿者:二川伸也
遺留分侵害額の支払いを実際に求めるには——調停・訴訟の手順と注意点【高松・香川の弁護士が解説】
本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
Mediation & Litigation for Reserved Portion

遺留分の意思表示をした——次は調停・訴訟で実際の支払いを求める

内容証明郵便を送った後の具体的な手続き、調停条項のポイント、調停不成立後の民事訴訟まで——高松市の弁護士が解説します

「遺留分侵害額請求の内容証明は送った。でも兄は応じてくれない。次に何をすればいいのか……」

遺留分侵害額の意思表示をしても相手方が任意に支払わない場合は、家庭裁判所への調停申立て、または民事訴訟の提起へと進みます。香川の皆様が「どの手続きをどの順番で進めればよいか」を迷わないよう、この記事で流れを整理します。

新法・旧法で解決ルートが異なる——まず相続開始日を確認

前回コラムで解説したとおり、遺留分の制度は令和元年(2019年)7月1日に大きく改正されています。適用される法律によって調停・訴訟の内容が変わるため、まず相続開始日を確認してください。

新法(令和元年7月1日以降の相続)

遺留分侵害額請求——金銭での解決

物件の返還は求めず、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを求める。

  • 内容証明郵便で侵害額請求の意思表示
  • 家庭裁判所に調停申立て
  • 調停条項(案)の作成・交渉
  • 調停不成立→民事訴訟(地裁)を提起
旧法(令和元年7月1日より前の相続)

遺留分減殺請求——現物または価額弁償

不動産等の現物返還(共有持分移転登記)または価額弁償(金銭)を求める。

  • 内容証明郵便で減殺請求の意思表示
  • 家庭裁判所に調停申立て(価額弁償請求)
  • 調停条項(案)の作成・交渉
  • 調停不成立→民事訴訟(地裁)を提起(共有持分移転登記請求)

調停申立ての手順と注意点

  1. 01
    遺留分侵害額請求の意思表示(内容証明郵便)を確認・済ませる 調停申立ての前に、民法1048条の期間内(相続開始・侵害を知った時から1年、相続開始から10年)に意思表示が完了していることが前提です。調停申立て自体が意思表示の代わりにはなりません。
  2. 02
    家庭裁判所に調停申立書を提出する 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てます。申立費用は収入印紙1,200円+予納郵便切手。被相続人の戸籍謄本一式・相続人全員の戸籍謄本・不動産登記事項証明書・遺言書の写し等を添付します。
  3. 03
    具体的な請求金額を算定して調停に臨む 調停申立て時には申立人として具体的な金額を示します。遺留分の算定基礎となる財産を評価し、自らの遺留分に相当する金額から既に相続した財産額を差し引いた額が請求額になります。
  4. 04
    調停成立→調停調書の作成(強制執行力あり) 調停調書は判決と同一の効力があり、支払いを怠った場合に強制執行ができます。ただし相手方の資力が十分かどうかを事前に確認することが重要です。物件は相手方のものになっているため、侵害額の支払いを受けられなくなることがあります。

侵害額の計算——具体的な数字で確認する

計算例:PDFの事例(相続人が兄弟2名)
相続財産 土地・建物(4,000万円)+ 預金・現金(400万円)= 合計4,400万円
遺留分総額 4,400万円 × 1/2 = 2,200万円
弟の個別遺留分 2,200万円 × 1/2(法定相続分)= 1,100万円
弟が既に取得した額 預金・現金 400万円
侵害額 = 1,100万円 - 400万円 = 700万円
調停条項(案)のポイント
調停調書は裁判所が作成しますが、当事者があらかじめ条項案を準備しておくとスムーズに進みます。主な記載事項は、①不動産が相手方の所有であることの確認、②遺留分侵害額の金額と承認、③支払方法(即金か分割か)と振込口座、④支払を怠った場合の期限の利益喪失と遅延損害金(年10%など)、⑤紛争の全面解決と債権債務なしの確認——の5点です。

調停が不成立になったら——民事訴訟へ移行する

遺産分割調停は不成立になると審判に移行しますが、遺留分に関する調停は審判に移行しません。調停が不成立となった場合は、民事訴訟(地方裁判所)を提起する必要があります。

新法:遺留分侵害額の支払いを求める訴え(地裁)

  • 提起先:相続開始時の被相続人の住所地を管轄する地方裁判所
  • 提起費用:請求する遺留分侵害額を訴額として算定した収入印紙+予納郵便切手
  • 添付書類:戸籍謄本一式・不動産登記事項証明書・遺言書写し・遺留分侵害額請求書・不動産評価書・固定資産評価証明書・訴訟委任状

旧法:共有持分移転登記手続を求める訴え(地裁)

  • 令和元年7月1日より前に開始した相続が対象
  • 訴訟では申立人(原告)自らが価額弁償を求めることはできず、遺留分減殺に基づく共有持分移転登記手続を請求する形になる
  • 相手方(被告)が訴訟中に価額弁償の提供を申し出て要件が充足されれば、価額弁償による判決がなされる
⚠ 相手方の支払能力を必ず確認する
調停・訴訟で「700万円を支払え」という結論が出ても、相手方に支払能力がなければ実際には回収できません。不動産はすべて相手方のものになっており、預金等の資産がなければ強制執行をかけても回収できない事態になりかねません。調停成立前・訴訟提起前に、相手方の資産状況を可能な限り把握しておくことが重要です。

調停と訴訟——手続きの違いと弁護士関与の効果

比較項目 家庭裁判所の調停 民事訴訟(地方裁判所)
手続きの目的 話し合いによる合意形成柔軟な解決 裁判所による判決での解決強制力あり
不成立後の移行 審判に移行しない(遺留分事件の特徴)→ 民事訴訟へ注意 判決→確定→強制執行が可能
解決の柔軟性 分割払い・支払猶予など柔軟な合意が可能 法律上の請求通りの判断となる
費用・期間 申立費用1,200円。期間は数か月〜1年程度 訴額に応じた印紙代。期間は1年〜数年以上になることも長期化リスク
強制執行力 調停調書は判決と同一の効力あり→強制執行可能有効 確定判決により強制執行可能
弁護士の役割 侵害額の計算・申立書作成・調停期日代理・条項案の作成 訴状作成・証拠収集・期日対応・不動産評価の主張必須に近い
調停前に弁護士に相談することをお勧めする理由
遺留分侵害額の正確な計算には、不動産評価・贈与の把握・法定相続分の確認など専門的な作業が必要です。金額を誤ると後から増額できても、相手方との交渉が複雑になります。また、請求する相手を誤ると侵害額全額を回収できなくなるリスクもあります。早い段階で弁護士に依頼することが、確実な解決への近道です。
相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。 →

遺産分割・遺言・相続放棄など、相続全般の解説をまとめています

「相手が支払いに応じない」——調停・訴訟のサポートをします

侵害額の計算から調停申立書の作成、期日対応、訴訟提起まで、よつば法律事務所が一貫してサポートします。高松市周辺の皆様の遺留分問題、まずはお電話でご相談ください。

※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。
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