2026.04.07
コラム

後に認知された相続人

投稿者:二川伸也

死後認知を受けたが遺産分割は終わっていた…相続分を取り戻せる?弁護士が解説|よつば法律事務所

Posthumous Recognition & Inheritance Value Claim

死後認知されたが、すでに遺産分割は終わっていた。
相続分を取り戻す方法はあるのか?

遺産分割が完了した後に死後認知を受けた場合でも、法律は保護の手段を用意しています。「価額の支払請求」という制度について、弁護士が丁寧に解説します。

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。

「父の死後、認知の裁判が確定した。でも、その頃にはすでに他の兄弟が遺産分割を終えていて、私はまったく何ももらっていない。どうすればよいのか」

このような状況は、実際に起こりうるケースです。死後認知を受けた方(被認知者)には、遺産分割が終了した後でも、民法910条に基づく「価額の支払請求」という手段が認められています。遺産そのものを取り返すことはできませんが、相続分に相当する金銭を請求できます。

なぜ「価額の支払」なのか──法律の仕組みを理解する

▎死後認知をめぐる法的構造
①
認知前他の相続人だけで遺産分割協議が成立。遺産はすでに分配済み。
②
認知後死後認知の効力は出生時にさかのぼる(民法784条)。本来、相続開始時から相続人だったことになる。
③
しかし認知の効力は「第三者がすでに取得した権利を害することができない」(民法784条ただし書)。そのため遺産分割の効力は維持される。
→
被認知者は遺産の現物返還を求めることはできず、相続分に相当する価額(金銭)の支払を請求できる(民法910条)。

この「価額」の算定基準時は価額支払請求時とされており(最高裁平成28年2月26日判決)、請求を受けた時点から遅滞に陥ります。つまり、請求が遅れるほど相手方が受け取る価格変動の影響を受けることになるため、認知確定後はできるだけ速やかに行動することが重要です。

手続きの流れ──3つのステップ

1

家庭裁判所への調停申立て
相手方(被認知者の出現により法定相続分が変動する共同相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所に、「遺産分割後の被認知者の価額の支払請求」の調停を申し立てます。収入印紙1,200円が必要です。調停前置主義の適用があるため、原則として調停から始めます。
⏱ 認知があったときから5年以内
2

調停成立に向けた交渉・条項案の提示
調停が進むなかで合意が成立しそうであれば、価額支払の義務が執行力を持つ形で調停条項(案)を作成します。調停調書は確定判決と同一の効力を持ちます。なお、現実に支払がなされた事実または義務の確認が条項に記載される必要があります(最高裁昭和54年7月10日判決)。
3
調停不成立の場合は民事訴訟を提起
調停が不成立に終わった場合、地方裁判所または簡易裁判所に民事訴訟を提起します。調停申立から2週間以内に訴えを提起した場合は、調停申立時に訴えを提起したとみなされます(家事手続法272条3項)。訴訟物の価額は請求する金額をもとに算定します。
⏱ 認知があったときから5年以内

知っておきたい重要なポイント

誰に対して請求できるか

原則として、被認知者の出現によって法定相続分が変動する共同相続人が請求の相手方となります。東京地裁平成28年10月28日判決では、相続人が配偶者とその他の子である場合、配偶者の法定相続分は被認知者の出現によって変わらないため、配偶者への請求は認められないとしています。相続人の構成によって請求の相手方が変わる点に注意が必要です。

価額算定の基礎となる遺産に負債は含まれるか

最高裁令和元年8月27日判決は、民法910条に基づく価額の算定にあたり、積極財産(プラスの財産)の価額から消極財産(借金・債務)の価額を控除しないと判断しています。なぜなら、相続債務は遺産分割とは別に、認知された者を含む各相続人に当然に承継されるからです。

消滅時効に注意

価額の支払請求権は、死後認知が認められてから5年間権利を行使しない場合、時効により消滅すると解されています(民法884条類推)。認知の裁判が確定したら、速やかに弁護士に相談することをお勧めします。

⚠️ 遺言がある場合の注意点:遺言の内容が死後認知によって相続人となった被認知者の遺留分を侵害していた場合、東京高裁平成29年2月22日判決は、認容判決確定から1年以内に遺留分減殺の意思表示をすれば民法910条の価額支払請求が可能であり、各共同相続人に対して遺留分額を超える価額の割合に応じた支払請求ができるとしています。

自分で進めた場合と弁護士に依頼した場合の比較

比較項目 自分で対応 弁護士に依頼
制度の理解・適用判断 民法910条・884条の関係が複雑で誤りやすい 法的構造を正確に把握した上で戦略を立案
相続分・請求額の算定 遺産の評価・消極財産の扱いが難しい 適切な価額算定を行い、有利な主張を展開
調停申立書の作成 記載すべき事項(被相続人の死亡・分割協議・認知の事実等)の漏れが生じやすい 必要な事実を網羅した申立書を作成
調停条項案の作成 執行力のある記載が必要で専門知識が不可欠 調停調書として有効な条項を設計
訴訟対応 証拠の整理・主張構成が困難 代理人として証拠収集・立証活動を一貫サポート
時効管理 5年の期限を見落とすリスクがある 期限内の確実な権利行使をサポート

死後認知に関わる相続問題は、通常の相続よりも法的に複雑です。香川の皆様でも「自分がこのケースに当たるかもしれない」と感じた場合には、一人で抱え込まず、早めに専門家にご相談ください。

相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。→

複雑な相続問題も、よつば法律事務所にご相談ください

死後認知・価額支払請求は、時効期間の管理から調停・訴訟まで、専門的な知識と経験が求められます。「自分が請求できるのか」「いくら請求できるのか」まずはご状況をお聞かせください。

よつば法律事務所では、高松の弁護士として相続に関わるあらゆるご相談に対応しております。初回のご相談内容を丁寧にお聞きした上で、最適な解決策をご提案いたします。

※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

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