2026.04.07
コラム

賛否不明者と共有物管理

投稿者:二川伸也

相続不動産の修繕、他の相続人が返事をくれない。賛否不明でも工事できる方法を弁護士が高松から解説 | よつば法律事務所

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
Minor Changes to Inherited Co-owned Property

相続した実家の雨漏り修繕、他の相続人が返事をくれない。
令和3年改正で、賛否不明のまま工事できる道があります。

遺産分割が未了の共有不動産で修繕が必要になったとき、連絡がとれない・返事をしない共有者がいても手続きを進める方法を弁護士が高松から解説します。

父が亡くなり子供5人で自宅を共有相続したが、遺産分割は未了。実家に雨漏りが発生し屋根の防水工事が必要なのに、遠方の兄弟3人がいいとも悪いとも言わない――。香川の皆様からも、こうした「返事が来ない共有者がいて共有物の管理が止まってしまう」というご相談をいただきます。令和3年の民法改正により、一定の手続きを踏めば賛否不明の共有者を除いた過半数で管理事項を決定できる制度が新設されました。本記事でその手順を解説します。

「軽微な変更」なら過半数で決められる(令和3年改正)

改正前の民法は、共有物に変更を加える場合は共有者全員の同意が必要とされており(旧民法第251条)、軽微な修繕でも一人でも反対・無回答では進められませんでした。

令和3年の民法改正により、形状または効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」は、持分の過半数で決定できるようになりました(民法第251条第1項・第252条第1項)。

「軽微な変更」の例:砂利道のアスファルト舗装、建物の外壁塗装、屋上・屋根全体の防水工事などの大規模修繕は、基本的に軽微な変更に当たると考えられています。本事例の屋根防水工事も特殊な事情のない限り軽微な変更として、持分の過半数で決定できます。

それでも「賛否不明者」がいる場合の新制度

過半数の同意があれば進められるとはいえ、返事すら来ない共有者がいると持分の計算ができません。そこで令和3年改正でさらに、賛否不明の共有者以外で管理事項を決定できる制度が新設されました(民法第252条第2項)。

手続きの流れ:事前催告→裁判所申立て→決定

1
事前催告:賛否不明の共有者に対し、相当の期間(約2週間)を定め、決定しようとする管理事項(例:屋根防水工事の実施)を示した上で賛否を明らかにするよう書面で催告する。内容証明郵便を使うと裁判の証拠として有効。
↓ 催告期間内も無回答の場合
2
裁判所への申立て:共有物の所在地を管轄する地方裁判所に「賛否不明共有者の共有物管理決定申立書」を提出する(収入印紙1,000円×対象共有物の数)。添付書類は不動産登記事項証明書・事前催告書の写し等。
↓
3
裁判所から賛否不明者への通知:裁判所が賛否不明共有者に対し、1か月以上の期間を定めて賛否を明らかにするよう通知する(非訟事件手続法第85条第3項)。
↓ それでも無回答の場合
4
裁判所の決定:裁判所が「賛否不明者以外の共有者の持分の過半数で管理事項を決定できる」旨の裁判を下す。裁判確定後、賛否不明者を除いた共有者の持分過半数の合意で防水工事を実施できる。
本事例での結論:相続人5人(持分各5分の1)のうち、賛否不明の3名を除いた申立人+同意した1名の2名(持分合計5分の2)では過半数に届きませんが、裁判所の決定により賛否不明の3名を除いた持分の過半数での決定が可能となります。裁判所の関与により、無関心な共有者による管理の停滞を防げる制度です。
注意:この制度は「管理行為」の決定に使える制度です。共有物の売却など処分行為には適用されません。また、催告書は後の裁判の証拠になるため、内容証明郵便で送付し受領証を保管することを強くお勧めします。

自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 自分で対応 弁護士に依頼
「軽微な変更」の判断 工事内容が軽微な変更か処分行為かの判断が難しく、誤ると手続きが無効になるリスクがある 工事内容を確認し、過半数決定で進める管理行為かどうかを的確に判断
事前催告書の作成 記載内容が不十分だと裁判で証拠として使えない場合がある 内容証明郵便による送付を含め、証拠として有効な催告書を作成
申立書の作成 当事者目録・共有物目録・管理行為目録など複数の別紙を正確に作成する必要がある 裁判所の要件を満たした申立書類を一式作成し、手続きをスムーズに進める
持分計算・過半数の確認 賛否不明者を除いた持分の過半数の計算を誤ると決定が無効になることがある 相続人の持分関係を整理し、有効な決定のための数の確認を正確に行う
遺産分割との連携 修繕問題と並行する遺産分割協議の管理が困難 修繕問題の解決と並行して遺産分割協議の促進もサポート
費用の目安 収入印紙・郵便切手・内容証明郵便代など実費のみ 着手金・報酬金(案件規模による。初回相談は多くの事務所で無料)

高松市周辺でのご相談はよつば法律事務所へ

「相続した実家が傷んでいるのに、他の相続人が動かない」「遺産分割が進まないまま建物が老朽化している」――こうしたお困りごとは、香川の皆様からも多くいただくご相談です。まずは弁護士にご相談ください。

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