「12年間、妻と二人で母の介護を続けてきた。なのに、ほとんど顔も出さなかった兄と姉から『遺産は3等分が当然』と言われた——」
こうした状況で相続人全員が合意できない場合、家庭裁判所に「寄与分を定める調停」を申し立てることが解決の道になります。ただし、調停・審判で寄与分を認めてもらうには「特別の寄与」であることを証拠で示す必要があります。この記事でポイントを整理します。
こうした状況で相続人全員が合意できない場合、家庭裁判所に「寄与分を定める調停」を申し立てることが解決の道になります。ただし、調停・審判で寄与分を認めてもらうには「特別の寄与」であることを証拠で示す必要があります。この記事でポイントを整理します。
まず全体像を把握する——遺産分割調停と寄与分調停の関係
寄与分は遺産分割と切り離して単独で申立てることはできません。遺産分割調停の申立てと合わせて(または申立て後に)、寄与分を定める調停を申し立てるのが実務上の流れです。
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01遺産分割調停を申立てる(家庭裁判所) 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ。申立費用は収入印紙1,200円+予納郵便切手。被相続人の戸籍謄本一式・相続人全員の戸籍謄本・遺産関係の証明書・相続関係図などが必要です。
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02寄与分を定める調停を申立てる(同裁判所) 遺産分割調停と同時でも、その後でも申立て可能です。遺産分割調停が係属している裁判所に申立てます(申立費用は同じく収入印紙1,200円)。既に戸籍謄本を提出済みの場合、重ねて添付する必要はありません。
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03調停での交渉・合意を目指す 調停委員を介して話し合いを重ねます。寄与分の金額または割合について合意が成立すれば、調停調書が作成されます。
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04調停不成立の場合——審判へ移行 調停が成立しない場合、改めて申立てをすることなく審判に移行します。寄与分を定める審判を先行させてから遺産分割の審判を行うのが通常の流れです。家庭裁判所が証拠に基づいて寄与分の金額または割合を決定します。
「特別の寄与」とは——認められるための3つの要件
調停・審判で寄与分が認められるには、単に「他の相続人より介護した」というだけでは足りません。以下の3要件を満たす必要があります。
⚠ よくある誤解
「兄弟の中で自分1人だけが親の面倒を見た」という事実だけでは、「特別の寄与」として評価されません。他の相続人より関わりが大きかっただけでは不十分です。以下の要件を一つひとつ確認してください。
「兄弟の中で自分1人だけが親の面倒を見た」という事実だけでは、「特別の寄与」として評価されません。他の相続人より関わりが大きかっただけでは不十分です。以下の要件を一つひとつ確認してください。
- 要件①:被相続人の財産の「維持または増加」への貢献があること——介護によって看護費用の支出を免れさせた、事業を手伝って収益を上げたなど、財産への具体的な影響が必要です
- 要件②:「特別」の寄与であること——相続人という身分関係から通常期待される程度を「超える」貢献でなければなりません。親族として当然の範囲の介護では認められません
- 要件③:無償または無償に近い状態での寄与であること——報酬をもらっていた場合はもちろん、被相続人の家や土地を無償で使用している場合も、寄与分に該当しないと判断されることがあります
寄与として認められる主な6類型
Type A
家事従事型
被相続人の事業に従事し、相続財産の維持・増加に貢献した場合
Type B
金銭出資型
財産上の給付・借金返済等で相続財産の維持・増加に貢献した場合
Type C
扶養型
被相続人を扶養し、その生活費を賄うことで相続財産の維持に寄与した場合
Type D
療養看護型
療養看護を行い、看護費用の支出を免れさせた場合(本事例はこれ)
Type E
財産管理型
財産管理を行い、管理費用の支出を免れさせた場合
Type F
競合型
上記の類型が複数重なる場合。家事従事型と他の類型の競合が多い
「特別の寄与」を裏付ける証拠の集め方
客観的な証拠がなければ、家庭裁判所は「特別の寄与」を認めません。調停・審判の前に、できる限り資料を収集しておくことが重要です。
療養看護の事実を示す資料
- 医療機関・介護施設の診断書・介護認定書
- ケアマネジャーのケアプラン・記録
- 訪問介護・デイサービスの利用記録
- 日常的な介護記録(日誌など)
財産維持への貢献を示す資料
- 介護費用を立て替えた領収書・通帳
- 専門看護師や介護ヘルパーの費用相場の資料
- 事業従事の場合は帳簿・売上記録
- 医師・ケアマネジャーの陳述書
無償性・継続性を示す資料
- 給与・報酬を受け取っていないことの証明
- 介護期間中の自身の就労状況・休職記録
- 介護のために転居・同居したことが分かる資料
他の相続人が関与しなかった事実
- 介護施設・病院の面会記録
- 被相続人との通信記録(手紙・メールなど)
- 第三者(近隣住民・知人)の陳述
特別受益との関係——差し引きの注意点
寄与分を主張する相続人に同時に特別受益もある場合、東京高裁(平成22年5月20日決定)は、特別受益の超過部分を審判で認定された寄与分からさらに差し引くことはしないと判断しています。両者が競合するケースでは、弁護士に相談しながら慎重に対応することをお勧めします。
寄与分を主張する相続人に同時に特別受益もある場合、東京高裁(平成22年5月20日決定)は、特別受益の超過部分を審判で認定された寄与分からさらに差し引くことはしないと判断しています。両者が競合するケースでは、弁護士に相談しながら慎重に対応することをお勧めします。
「協議で解決」と「調停・審判で解決」——対応方法の比較
| 比較項目 | 相続人全員の協議で解決 | 調停・審判で解決 |
|---|---|---|
| 前提条件 | 全員が寄与分の存在と金額・割合に合意できることシンプル | 合意が得られない場合に利用。家庭裁判所が関与公的手続き |
| 手続き期間 | 合意次第ですぐに完了できる | 調停は数か月〜1年以上、審判はさらに長期化することも時間がかかる |
| 証拠の必要性 | 合意があれば証拠がなくても協議書を作成できる | 「特別の寄与」を客観的証拠で立証しなければならない証拠が必須 |
| 認められる寄与の範囲 | 全員合意があれば、法律上の要件を厳密に問わず反映できる | 法律上の「特別の寄与」に該当するかどうか、裁判所が厳格に判断する |
| 10年ルールとの関係 | 早期解決できれば10年ルールの問題なし | 調停・審判に時間がかかる場合も、申立てをしていれば期間内とみなされる申立てが重要 |
| 弁護士関与の効果 | 協議書の適切な条項作成・交渉サポート | 証拠収集・申立書作成・調停期日の代理・審判対応まで全面サポート強く推奨 |
相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。
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「寄与分を認めてもらえない」——まず弁護士に相談を
証拠の収集方法・申立書の作成・調停期日での主張——どの段階から相談していただいても構いません。高松市周辺の皆様の寄与分・相続問題に、よつば法律事務所が丁寧に対応します。
※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。