「父の遺言では全財産を母に相続させると書いてあったが、相続人みんなで話し合い、土地は母、株式は長男、預金は次男と分けたい」——そのようなご相談は、高松市周辺でも珍しくありません。
遺言は故人の意思を示す大切な書類ですが、相続人全員が合意の上で異なる分け方を望む場合、一定の条件のもとで遺言と異なる遺産分割を行うことができます。このコラムでは、その方法と注意点を詳しくご説明します。
相続人全員の合意があれば、遺言と異なる遺産分割は原則として可能です
遺言制度は遺言者の意思を尊重する制度ですが、相続人全員が別の方法を望んでいる場合にまで、故人の意思を強制すべきものではないと解されています。したがって、相続人全員が合意していれば、遺言と異なる内容の遺産分割を成立させることができます。
ただし、遺言の種類によって手続きの方法が異なります。以下の3つの類型をご確認ください。
遺言の種類ごとの対処方法
「遺産の○割を渡す」という遺言
包括受遺者は相続放棄が可能。放棄により受遺者の取得分をなくし、他の相続人が遺産分割できる。ただし、受遺者にも一部を取得させる形での変更分割は成立しない。
放棄を介した調整が必要「この財産を○○に渡す」という遺言
受遺者はいつでも遺贈を放棄できる(民法986条)。放棄の効力は遺言者の死亡時に遡り、対象財産は相続人全員に帰属。その後、全員で遺産分割協議が可能となる。
放棄後に自由に分割可遺産分割方法の指定
相続人全員が遺言の存在を認識した上で異なる内容の遺産分割に合意していれば、遺言内容と異なる分割を成立させることができると解されている。協議書への明記が必須。
全員合意で変更可📌 重要:どの類型であっても、「遺言の存在と内容を全員が認識した上で合意した」ことを協議書に明記することが必要です。これを怠ると、後日「知っていたら同意しなかった」として錯誤取消し(民法95条)が主張されるリスクがあります。
協議書の作成手順と記載上の注意点
相続人の中に遺言の存在や内容を知らない人がいる場合、遺言と異なる分割への合意が成立したとはいえない。全員で内容を共有することが出発点
特定遺贈であれば受遺者の放棄、「相続させる」旨の遺言であれば全員合意の意思確認など、遺言の類型に合った手続きを確認する
協議書の冒頭に「被相続人は〇〇の遺言をしたが、相続人全員の協議により以下のとおり分割することに合意した」旨を記載する
相続人全員の真意と人違いがないことを明らかにするため、実印での押印と印鑑登録証明書の添付が必要
法定相続分を超える権利の承継は登記をしなければ第三者に対抗できない(民法899条の2第1項)。相続登記は令和6年4月より義務化されている
遺言執行者が指定または選任されている場合、相続人は遺言の執行を妨げる行為ができないとされています(民法1013条)。
ただし、相続人全員が遺言と異なる内容の遺産分割に合意している場合は、遺言者の意思より相続人全員の意思を尊重すべきとの考え方から、遺言執行者の参加・同意がなくても協議を成立させられると解されています。遺言執行者がいる場合は、早めに弁護士にご相談ください。
自分で進める場合と弁護士に依頼する場合の比較
遺言と異なる遺産分割は、通常の分割より法的な検討事項が多く、記載漏れが後日の紛争を招く可能性があります。香川の皆様の参考に、以下の表をご覧ください。
| 比較項目 | 自分で手続き | 弁護士に依頼 |
|---|---|---|
| 遺言の種類判定 | 包括遺贈・特定遺贈・遺産分割方法の指定の区別が難しい | 遺言の種類を正確に判定し、適切な対応を提案 |
| 協議書への記載 | 遺言の存在・内容の明記が漏れやすい | 錯誤リスクを防ぐ記載を的確に反映 |
| 遺言執行者対応 | 執行者がいる場合の対処が分からない | 執行者との調整・協議をサポート |
| 放棄の手続き | 遺贈放棄の要件・方法の把握が難しい | 必要な放棄手続きを正確にサポート |
| 登記手続き | 司法書士への別途依頼が必要 | 司法書士と連携したトータルサポートが可能 |
| 費用 | 書類取得実費のみ | 弁護士費用が別途必要(内容により異なる) |
まずは、よつば法律事務所にご相談ください
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