2026.04.04
コラム

相続財産が譲渡された場合

投稿者:二川伸也

兄が相続土地の持分を無断で第三者に譲渡——取り戻す3つの手段を弁護士が解説|よつば法律事務所

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
Unauthorized Transfer of Co-Owned Property Share

兄が相続土地の持分を無断で第三者に譲渡
取り戻す3つの手段を弁護士が解説

遺産分割前に共同相続人の1人が特定不動産の持分を第三者に売ってしまった——このケースでは「相続分取戻権」は使えません。では、どう対処すればよいのでしょうか。

⚑ THIS CASE — IMPORTANT
相続分の取戻権(民法905条)は使えない——特定不動産の「共有持分」の譲渡は、相続分(包括的持分)の譲渡とは異なるため、取戻権を行使することができません(最判昭53年)。別の手段で対処する必要があります。

「兄が、私に無断で遺産の土地に相続登記をして、兄の持分を第三者に譲渡してしまった。私はこの土地で家業を続けなければならない。何とか取り戻せないか——」

高松市周辺でもこうしたご相談は見受けられます。まず知っておくべき重要な点は、このケースでは前回解説した「相続分取戻権」は使えないということです。しかし手段がないわけではありません。3つのアプローチを順に解説します。

なぜ取戻権が使えないのか——持分譲渡と相続分譲渡の違い

民法905条の取戻権は「相続分の譲渡」に対して認められる制度です。ここでいう「相続分」とは、積極・消極財産を含む遺産全体に対する包括的持分(相続人としての地位)の移転を指します。

これに対し、今回のケースは特定の不動産という個別財産の共有持分を譲渡したものであり、最高裁昭和53年判決は「民法905条の規定を適用または類推適用することはできない」と明示しています。

📌 持分譲渡自体は法的に有効
遺産分割前でも、共同相続人の1人は法定相続分に従って持分登記ができ(民法899条)、その持分を自由に処分できます(通説・最判昭50年)。つまり兄の行為は違法ではなく、第三者は適法に持分を取得しています。だからこそ「取り戻す」ことは容易ではなく、交渉や法的手続きが必要になります。

取り戻すための3つの手段

1
共有持分買取りの申入れ
第三者に対して持分を買い取りたい旨を申し入れる(売買申込み)。法的強制力はないが、まず交渉の機会を作ることが重要。
まず試みる
2
共有物分割の調停申立て
簡易裁判所(または地方裁判所)に調停を申立て、話合いによる解決を目指す。持分買取りの意向も調停の場で主張できる。
話合いで解決
3
共有物分割の訴訟提起
調停不成立の場合は地方裁判所へ訴訟。裁判所が現物分割・賠償分割・競売を命じることができる。最も強力な手段。
最終的手段

手段①:共有持分買取りの申入れ

まずは第三者(持分取得者)に対して、持分を買い取りたい旨を書面で申し入れます。法律上の強制力はありませんが、第三者も共有状態から早期に脱退し持分を活用したいと考えていることが多く、交渉が成立するケースもあります。

  • 当事者の特定・対象不動産の特定を書面に明記する
  • 買い取りたい事情(家業継続の必要性など)も率直に記載する
  • 回答期限を設けて連絡を促す
  • 特に決まった方式はないが、書面(内容証明郵便が望ましい)で行う

手段②:共有物分割の調停申立て

申立ての基本情報

  • 申立人:相続人である持分共有者(あなた)
  • 相手方:共有持分取得者(第三者の譲受人)
  • 申立先:相手方の住所地を管轄する簡易裁判所(当事者合意があれば地方裁判所も可)
  • 申立費用:対象持分価額の3分の1に対応する印紙額+予納郵便切手

調停は話合いの場ですから、持分の分割にこだわらず「持分を買い取りたい」という意向を調停委員を通じて伝えることもできます。柔軟な解決が期待できます。

手段③:共有物分割の訴訟提起

調停が不成立に終わった場合は、民法258条に基づく共有物分割訴訟を提起します。裁判所は次のいずれかの方法で分割を命じることができます。

  1. A
    現物分割(民法258条1項) 不動産を物理的に分割します。ただし住居兼店舗などは現物分割が困難なことが多いです。
  2. B
    賠償分割(価格賠償)(民法258条2項) 共有者の1人が不動産を取得し、他の共有者に対して持分に相当する金銭を支払う方法。あなたが不動産全体を取得できる可能性がある最も実務的な方法です。
  3. C
    競売による換価(民法258条3項) 協議・賠償分割が困難な場合に競売で売却し代金を分配します。ただし不動産を失うリスクがあります。
⚠️ 訴訟は固有必要的共同訴訟——当事者の構成に注意
共有物分割訴訟は固有必要的共同訴訟です。持分を譲渡した兄(譲渡人)は被告に含まれませんが、原告にならなかった他の共同相続人は全員被告に含める必要があります。当事者の構成を誤ると訴訟が却下されるリスクがあります。弁護士への依頼が強く推奨されます。
📌 賠償金の保管義務(最判平25年)
賠償分割の判決によって遺産共有持分を有していた者(兄)に賠償金が支払われた場合、その者は遺産分割が行われるまでの間、その金員を保管する義務があります(最判平25年11月29日)。判決後の遺産分割でその金員も改めて分割対象になります。

自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 ご自身で対応 弁護士に依頼
法的判断 取戻権が使えない理由・使える手段の判断が難しい
誤った対応のリスク
状況に応じた正確な法的判断と戦略提案
安心
買取申入れ 交渉経験がなく相手に軽視されることも 弁護士名義の書面で交渉力が増す
効果的
調停申立て 書類準備・期日対応が困難 申立書作成から期日まで代理対応
スムーズ
共有物分割訴訟 固有必要的共同訴訟の当事者構成を誤るリスク
却下のリスク大
当事者構成・証拠・主張を適切に整理
確実
遺産分割との連動 賠償金の保管義務等を見落とすリスク 訴訟後の遺産分割まで一貫サポート
費用 申立・提訴費用の実費のみ 弁護士費用が発生(内容により異なります)

共同相続人に無断で持分を譲渡されてしまった場合、法的に有効な行為であっても解決策は存在します。香川の皆様も、「遺産の土地が見知らぬ第三者の名義になった」という事態に直面したら、早めに弁護士へご相談ください。

📋
相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。 相続分の譲渡・取戻権・共有物分割のほか、遺産分割・相続放棄・遺言など相続に関するテーマを網羅的にご案内しています。

「相続土地の持分が勝手に売られた」——まずはご相談を

「家業を続けるためにこの土地が必要なのに、第三者が持分を持っている」「調停を申し立てたいが手続きがわからない」「訴訟になったらどうなるのか不安」——こうしたお悩みに、よつば法律事務所が丁寧にお応えします。

高松市を拠点に、香川全域からのご相談をお受けしています。お気軽にお電話ください。

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