2026.04.02
コラム

受益者連続信託の利用

投稿者:二川伸也

後継ぎ遺贈はできない?受益者連続信託で「先妻の子へ財産を渡す」を実現する方法|香川・高松の弁護士 よつば法律事務所

INHERITANCE & TRUST

後継ぎ遺贈はなぜ無効?
受益者連続信託
「後妻→先妻の子」への
財産承継を実現する方法

公開日:2025年 | 執筆:よつば法律事務所 弁護士

「全財産を後妻に遺したい。でも後妻が亡くなった後は、先妻との子に渡してほしい」――このような願いをお持ちの方は、香川・高松市周辺でも少なくありません。
しかし、遺言でそのまま書いても「後継ぎ遺贈」として無効になる可能性が高いのです。
本コラムでは、信託法上の「受益者連続信託」という仕組みを使って、この問題を合法的に解決する方法を弁護士がわかりやすく解説します。

POINT 01そもそも「後継ぎ遺贈」はなぜ無効なのか?

「全財産を妻に相続させる。その後、妻が亡くなった場合は先妻との子が受け継ぐ。」――一見もっともな内容ですが、民法の世界ではこれを後継ぎ遺贈(こうつぎいぞう)といい、原則として無効と解されています。

理由は、一度相続によって所有権を取得した財産は、その人が自由に処分できる完全な権利として確定するという民法の原則と矛盾するからです。遺言者の意思だけで民法の相続秩序を変更することは許されない、というのが裁判実務の考え方です。

⚠ 注意:よくある誤解
「遺言に書けば何でもできる」と思われがちですが、後継ぎ遺贈のように民法の相続原則に反する内容は、遺言に記載しても効力を持ちません。専門家に確認せずに遺言を作成してしまうと、意図した財産承継が実現しない恐れがあります。

POINT 02解決策は「受益者連続信託」――信託法が認めた合法的な仕組み

後継ぎ遺贈が無効でも、信託法は「受益者連続信託」という代替手段を明示的に認めています(信託法第91条)。これを活用することで、冒頭のケースのような財産承継を実現できます。

受益者連続信託とは?

受益者連続信託とは、受益者が死亡した際に、その受益権が消滅し、あらかじめ定めた次の受益者が新たな受益権を取得する信託です。

受益者連続信託のしくみ(本事例の場合)

委託者(夫:甲)信託を設定
第一受益者(後妻:丙)夫の死後、生活費等を受給
第二受益者(先妻の子:丁)後妻の死後、残余財産を取得

この仕組みのポイントは、後妻から先妻の子へ「相続」するわけではないという点です。後妻が亡くなった時点で後妻の受益権は消滅し、あらかじめ信託で定められた先妻の子が、委託者(夫)から直接、新たな受益権を取得します。これにより後妻の相続財産には含まれず、後妻の兄弟に渡ることを防げます。

📌 期間制限に注意
受益者連続信託には信託設定時から30年を経過した後は、受益権の承継は1回限りという制限があります(信託法91条)。あまりにも長期・多世代にわたる指定には限界がありますのでご注意ください。

POINT 03具体的な手続きの流れ――2つの設定方法

受益者連続信託を設定する方法は主に①遺言信託②遺言代用信託の2種類です。

①遺言信託(遺言で信託を設定する方法)

  1. 遺言者が公正証書遺言の中で信託の内容(信託財産・受託者・第一・第二受益者など)を記載する
  2. 遺言者の死亡後、遺言執行者が信託設定の手続きを速やかに進める
  3. 受託者が信託財産の管理・運用を開始し、第一受益者(後妻)へ定期的に給付を行う
  4. 第一受益者(後妻)の死亡後、信託が終了し、残余財産を第二受益者(先妻の子)へ引き渡す

自筆証書遺言は検認手続きが必要で有効性が争われるケースもあるため、公正証書遺言による作成が強く推奨されます。

②遺言代用信託(生前に契約で設定する方法)

  1. 委託者(夫)と受託者が生前に信託契約を締結する
  2. 委託者の生存中は委託者自身または指定の者が受益者となる
  3. 委託者の死亡後、第一受益者(後妻)が受益権を取得し、生活費等の給付を受ける
  4. 第一受益者(後妻)の死亡後、残余財産を第二受益者(先妻の子)へ引き渡す

遺言代用信託は、民法所定の厳格な遺言の方式によらずに設定できるメリットがあります。

遺留分への注意

受益者連続信託を設定しても、相続人の遺留分を侵害する場合は遺留分侵害額請求の対象となります。本事例でいえば先妻の子(他の相続人)の遺留分には注意が必要です。将来的な紛争を避けるため、遺留分相当額は別途確保しておくことを検討しましょう。

POINT 04自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較

受益者連続信託の設定は法的な知識が多岐にわたるため、専門家のサポートが不可欠です。以下に自己対応と弁護士依頼の違いを整理します。

比較項目 ご自身のみで対応 弁護士に依頼
法的な正確性 条項の不備・無効リスクあり 信託法・相続法に即した設計が可能
遺留分への対応 見落としが発生しやすい 遺留分計算・対策を同時に検討
公証役場との連携 個人対応は手間・時間がかかる 弁護士が公証人と連携してスムーズに手続き
受託者・遺言執行者の選定 適切な人選が難しい 弁護士自身が受託者・遺言執行者を担える
税務(相続税)への対応 複層化された受益権の課税は複雑 税理士と連携して適切に対応
費用感 公証役場手数料のみ(目的価額による) 弁護士費用+公証役場手数料(要見積)
安心感・確実性 後になって問題が発覚するリスク 将来のトラブルを予防できる

受益者連続信託は、通常の遺言と比べて設計の複雑さ・税務上の取り扱い・信託の管理実務など、考慮すべき点が多岐にわたります。費用はかかりますが、弁護士へのご相談が将来の安心につながります。

香川・高松の皆様へ
よつば法律事務所にご相談ください

「後継ぎ遺贈はできない」と諦める必要はありません。受益者連続信託を正しく活用すれば、ご自身の意思に沿った財産承継を実現することができます。

よつば法律事務所では、相続・信託に精通した弁護士が、お客様一人ひとりのご状況に合わせたオーダーメイドの信託・遺言設計をご提案します。

「遺留分はどうなるか」「受託者は誰にすべきか」「税金はどう扱われるか」など、ご不安な点はどんな些細なことでも構いません。まずはお気軽にご連絡ください。


よつば法律事務所
〒760-0028 香川県高松市鍛冶屋町3-1香川三友ビル2階
TEL:087-802-2936

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