2026.04.02
コラム

遺言執行者の指定がないとき

投稿者:二川伸也

「故人が遺言書を残してくれていたのに、遺言執行者が指定されていない——この場合、誰が遺言の内容を実現すればよいのだろう?」そのような疑問をお持ちの方は少なくありません。遺言書があっても、不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きを実際に進めるには、「遺言執行者」の存在が重要な役割を果たします。

このコラムでは、遺言書に遺言執行者の指定がない場合に取るべき手続きと、遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てる方法について、弁護士の視点からわかりやすく解説します。高松市周辺でご相続の手続きを進めている方にも、ぜひご参考にしていただければ幸いです。

遺言執行者がいないとどうなる?まず「役割」を理解しましょう

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為を行う権限を持つ者です(民法1012条)。不動産の相続登記の申請、預貯金の解約・払戻し、株式の名義変更など、遺言内容の実現には遺言執行者の関与が不可欠な場面が多くあります。

特に「特定遺贈」(特定の財産を特定の人に遺贈する遺言)の場合、不動産の登記手続きは受遺者(遺産を受け取る人)と登記義務者(相続人または遺言執行者)の共同申請が原則です。遺言執行者がいれば、遺贈の履行は遺言執行者のみが行えますが(民法1012条2項)、いない場合は相続人の協力が必要となり、手続きが複雑になることがあります。

遺言執行者の選任が必要になる主なケース

  • 遺言書に遺言執行者の指定がなかった場合
  • 指定された遺言執行者が就職を拒絶・辞退した場合
  • 指定された遺言執行者が死亡・解任・辞任した場合
  • 指定された遺言執行者が未成年者または破産者だった場合
  • 遺言で指定の委託を受けた第三者が、いつまでも態度を明確にしない場合

解決策は家庭裁判所への「遺言執行者選任申立て」

遺言執行者がいない場合、利害関係人(受遺者・相続人・相続債権者など)が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます(民法1010条)。

申立てに必要な書類

  • 遺言執行者選任申立書(家庭裁判所備え付けの書式)
  • 遺言者の死亡が記載された戸籍謄本(除籍謄本等)※検認から5年以内であれば省略可
  • 遺言執行者候補者の住民票または戸籍の附票
  • 遺言書の写しまたは検認調書謄本の写し ※検認から5年以内であれば省略可
  • 利害関係を証する資料(親族の場合は戸籍謄本等)

申立て先・費用・時期

  • 申立先:相続を開始した地を管轄する家庭裁判所(高松市の場合は高松家庭裁判所)
  • 申立費用:収入印紙800円+予納郵便切手
  • 申立時期:随時(遺言者死亡後いつでも可)

申立てを受けた家庭裁判所は、候補者の意見を聴いたうえで(就職承諾書の提出等で代用可)、就職の諾否・適格性・遺言内容・執行の難易などを審理して選任を決定します。選任審判は遺言執行者への告知により効力が生じます。なお、未成年者と破産者は遺言執行者になることができません(民法1009条)。

「第三者への指定委託」がある場合の対応フロー

遺言書の中で「遺言執行者の指定を○○に委託する」と定められている場合があります。この場合、委託を受けた者(受託者)は、遅滞なく遺言執行者を指定して相続人に通知する義務があります(民法1006条2項)。ただし、受託者は委託を受けるか否かを自由に決めることができ、辞退する場合は遅滞なく相続人に通知しなければなりません(同条3項)。

問題となるのは、受託者がいつまでも態度を明確にしないケースです。このような場合の対応フローは以下のとおりです。

  • ①受託者に督促する:まずは受託者に対して、遺言執行者を指定するよう積極的に働きかける
  • ②内容証明郵便で催告する:督促しても回答がない場合は、回答期限を明記した催告書を内容証明郵便で送付する。督促した事実を明確に残すことが重要
  • ③家庭裁判所に選任申立てを行う:十分な期間が経過しても回答がない場合は、「遺言執行者がないとき」として(民法1010条)、家庭裁判所への選任申立てを検討する

自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 ご自身で対応する場合 弁護士に依頼する場合
申立書の作成 書式を確認しながら自分で作成する必要がある 弁護士が正確に作成・申立てを代理できる
受託者への督促・催告 適切な期間や形式の判断が難しく、証拠が残りにくい 内容証明郵便による催告書作成・送付など法的に有効な形で対応できる
遺言執行者の候補者選定 誰が適任かの判断が難しい 遺言の内容・遺産の状況に応じた適切な候補者を提案できる
選任後の執行サポート 登記・金融機関対応など各手続きを個別に対応する必要がある 遺言執行者として、または執行のサポートとして一貫した対応が可能
費用 申立費用(印紙代・切手代)のみ 弁護士費用が別途かかるが、手続き全体を効率よく進められる

まとめ|遺言執行者に関するお悩みは、よつば法律事務所にご相談ください

遺言書があっても遺言執行者がいない場合、相続手続きが思うように進まないことがあります。特に不動産の遺贈が含まれる場合や相続人がいない場合は、早期に遺言執行者を選任することが、遺言者の意思を実現するうえで重要です。

「遺言書はあるが執行者の指定がない」「受託者がいつまでも回答をくれない」「遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てたい」など、香川の皆様の遺言・相続に関するお悩みに、よつば法律事務所(香川県高松市)は誠実にお応えします。初回のご相談から丁寧に対応いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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