「夫はすでに亡くなっており、義父の相続人ではない。けれど、何年もほぼ一人で義父の介護をしてきた。義理の姉と弟が遺産を分けるというが、私には何も渡さないと言われた……」
この理不尽に応えるために、平成30年の相続法改正で「特別寄与料」という新しい制度が設けられました(令和元年7月1日施行)。相続人でない親族も、一定の要件を満たせば、相続人に対して介護の貢献に応じた金銭を請求できます。
この理不尽に応えるために、平成30年の相続法改正で「特別寄与料」という新しい制度が設けられました(令和元年7月1日施行)。相続人でない親族も、一定の要件を満たせば、相続人に対して介護の貢献に応じた金銭を請求できます。
「寄与分」と「特別寄与料」——似ているようで、まったく別の制度
前回のコラムで解説した「寄与分」(民法904条の2)と、今回の「特別寄与料」(民法1050条)は、ともに介護等の貢献を評価する制度ですが、対象となる人が根本的に異なります。
適用開始日に注意
この制度が適用されるのは、令和元年(2019年)7月1日以降に相続が開始した場合のみです(平成30年法律72号改正附則1条本文)。それ以前に相続が開始した場合には適用されません。
この制度が適用されるのは、令和元年(2019年)7月1日以降に相続が開始した場合のみです(平成30年法律72号改正附則1条本文)。それ以前に相続が開始した場合には適用されません。
最重要:請求できる期間は最長1年——除斥期間に注意
期間を過ぎると権利が消滅します(除斥期間)
起算点①
相続開始および相続人を知った時から
6か月以内
6か月以内
相続が始まったこと+誰が相続人かを知った時点から計算
起算点②(上限)
相続開始時から
1年以内
1年以内
どちらか早い期間内に調停を申立てる必要があります
この期間制限は除斥期間(延長・停止のない絶対的な期間)です。時効と異なり、完成を止める手段がありません。「相続が始まったら、できるだけ早く弁護士に相談する」ことが何より重要です。
特別寄与料が認められるための5つの要件
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①申立人が「被相続人の親族」であること 六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族(お嫁さんは「配偶者の親の姻族」として1親等の姻族に該当)が対象。相続放棄した者、欠格・廃除により相続権を失った者は除かれます。また、相続開始時点で離婚して親族関係がなくなっていれば請求できません。
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②寄与行為が「無償での療養看護その他の労務提供」であること 療養看護型・家業従事型が主な対象です。「財産上の給付」(現金の提供など)は対象外です。この点が相続人の寄与分(財産給付も対象)と異なります。
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③「被相続人の財産の維持または増加」があったこと 介護によって施設入所費用・ヘルパー代などの支出を免れさせたことで、遺産が減少せずに済んだという結果が必要です。
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④②と③の間に因果関係があること 労務提供があったから財産の維持・増加につながった、という因果関係が必要です。
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⑤「特別の寄与」(顕著な貢献)があること その人の貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献が必要です。なお、相続人の寄与分とは異なり「身分関係から通常期待される程度を超えること」という基準ではなく、介護に尽くした事実の顕著性が判断されます。
特別寄与料の額——計算方法と上限
療養看護型の場合の計算式(目安)
介護報酬日当 × 療養看護の日数 × 裁量割合
家庭裁判所は、寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して額を定めます(民法1050条3項)。相続人の寄与分における算定方法が目安となります。
- 上限あり:特別寄与料の額は、相続開始時の財産の価額から遺贈の価額を差し引いた残額を超えることはできない(民法1050条4項)
- 相続人が複数の場合:各相続人は、特別寄与料の額に自己の法定相続分(または指定相続分)を乗じた額をそれぞれ負担する(民法1050条5項)
- 遺留分侵害額請求権を行使した相続人に対しては、特別寄与料を請求できない(最決令5・10・26)
請求の手順——まず相続人と協議、まとまらなければ調停へ
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01相続人全員に特別寄与料の支払いを求める協議を行う まず相続人全員と話し合います。合意が得られれば、合意内容を書面にして請求完了です。
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02協議がまとまらない場合——家庭裁判所に調停を申立てる 相手方(相続人のうち一人)の住所地を管轄する家庭裁判所へ「特別の寄与に関する処分調停申立書」を提出。申立費用は収入印紙1,200円+予納郵便切手。遺産分割調停事件と無関係に、単独で申立てが可能です。
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03調停不成立の場合——審判へ移行 調停が成立しない場合は審判に移行し、家庭裁判所が特別寄与料の額を決定します。
申立書に記載すべき内容(記載のポイント)
申立書の「申立ての理由」欄には、①療養看護等を一定期間継続して行ったこと、②負担が大きかったが無償であったこと(またはそれに準じる状況)、③財産の維持または増加との因果関係——この3点を具体的に記載することが重要です。
申立書の「申立ての理由」欄には、①療養看護等を一定期間継続して行ったこと、②負担が大きかったが無償であったこと(またはそれに準じる状況)、③財産の維持または増加との因果関係——この3点を具体的に記載することが重要です。
特別寄与料と寄与分——制度の違いを整理
| 比較項目 | 寄与分(民法904条の2) | 特別寄与料(民法1050条) |
|---|---|---|
| 利用できる人 | 相続人本人相続人のみ | 相続人以外の親族(六親等内血族・配偶者・三親等内姻族)非相続人も可 |
| 寄与の種類 | 療養看護・家業従事・財産給付・扶養・財産管理など | 無償での療養看護・労務提供のみ(財産給付は対象外)限定的 |
| 請求相手 | 他の相続人全員(遺産分割の中で調整) | 各相続人に対して、それぞれの相続分に応じた額を請求 |
| 期間制限 | 相続開始から10年(具体的相続分主張の期限) | 相続開始・相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年(除斥期間)非常に短い |
| 遺産分割との関係 | 遺産分割の中で同時に処理される | 遺産分割調停と独立して申立て可能。ただし并合される可能性が高い |
| 施行日 | 従来からの制度 | 令和元年7月1日以降の相続開始に適用新制度 |
相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。
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遺産分割・遺言・相続放棄など、相続全般の解説をまとめています
「介護したのに何ももらえない」——除斥期間内に、まずご相談を
特別寄与料の請求は期間が非常に短い除斥期間があります。「自分が対象になるか」「どう請求すればよいか」——早めのご相談が解決への第一歩です。高松市周辺の皆様の相続問題を、よつば法律事務所が丁寧にサポートします。
※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。