2026.04.07
コラム

残余財産の遺産分割

投稿者:二川伸也

「長男に土地を相続させる」遺言があった——残りの遺産分割はどう進める?【高松・香川の弁護士が解説】

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
Will & Estate Division

「長男に土地を相続させる」遺言があった。
残りの遺産分割、長男も協議に参加が必要?

「相続させる旨の遺言」の法的性質と残余財産の分け方——高松市の弁護士が実務上の注意点を解説します


「遺言で長男が既に土地を取得している。もう法定相続分以上もらったのだから、残りの遺産分割に長男を加えなくていいのでは?」——高松市周辺でこのようなご相談をいただくことがあります。

実は、長男が遺言で法定相続分以上を取得していたとしても、残りの遺産分割協議には全員参加が必要です。ただし、協議書の書き方や、長男が協議に応じない場合の対処法には、実務上知っておくべきポイントがあります。

まず押さえるべき3つのポイント

「相続させる旨」の遺言があれば、その遺産は父の死亡と同時に長男が取得。遺産分割協議は不要
残りの遺産分割には長男も必ず参加が必要。法定相続分を超えていても被相続人の相続人であることに変わりはない
長男が協議に応じない場合は家庭裁判所への調停申立て、それでも不参加なら審判・受諾書面による解決も

「相続させる旨の遺言」の法的性質

「特定の相続人に遺産を相続させる」旨の遺言は、最高裁(平成3年4月19日判決)により、遺産分割方法の指定遺言と解されています。遺贈と異なり、受諾の意思表示などの行為を要せず、被相続人の死亡と同時に遺産は直ちに当該相続人に承継されます。

本件への当てはめ
「長男に土地を相続させる」という遺言があれば、父の死亡と同時に当該土地は長男に承継され、相続登記も遺産分割協議書なしで申請できます(民法899条の2により、法定相続分を超える部分については対抗要件として登記が必要)。

残りの遺産はどう分ける?——「遺産説」と「非遺産説」

遺言により取得された財産を「残余財産の遺産分割においてどう扱うか」について、学説上2つの考え方があります。実務は非遺産説によるものと解されています。

遺産説

遺言目的財産も遺産の一部とみる

遺言による取得を「一部分割」と位置づけ、残余財産の分割で具体的相続分(特別受益・寄与分考慮)により調整する。遺言取得分が相続分を超えれば代償金等で精算する必要がある。

最高裁の「遺産分割方法の指定」解釈には合致するが、早期解決を妨げる
非遺産説(実務主流)

遺言目的財産は遺産から「逸出」とみる

遺言による取得は遺贈と同様に扱い、民法903条1項を類推して特別受益の持戻しと同様に計算する。遺言取得分が相続分を超えても他の相続人への代償金支払いは不要。

遺言者の意思に合致。実務上この考え方で処理される
実務上の帰結
いずれの学説でも「残余財産の遺産分割は相続人全員で行う必要がある」点は共通しています。長男が法定相続分以上を遺言で取得していても、残余財産の分割協議への参加義務は免れません。ただし非遺産説では、長男が残余財産から取得できる具体的相続分はゼロになります。

遺産分割協議書の条項——2つの記載方法

長男も協議書に署名・押印する必要がありますが、長男が残余財産から何も取得しないことを記載する方法は2通りあります。

方法①:具体的相続分ゼロを確認する
相続人全員は、甲(長男)が被相続人の遺言により自宅底地を取得したことから、特別受益の持戻しによる具体的な相続分算定の結果、具体的相続分を取得しないことを確認する
方法②:シンプルに「取得しない」と合意
甲(長男)は、遺産を取得しない

どちらの方式も法的に有効ですが、方法①は遺言取得との関係を明確にする点で後日の紛争予防に役立ちます。事案の内容や相続人間の関係に応じて選択します。

長男が協議に応じない場合の対処法

  1. 01
    家庭裁判所に遺産分割調停を申立てる 長男を相手方として調停を申立てます。申立費用は収入印紙1,200円+予納郵便切手。遺産分割の対象財産(残余財産のみ)を遺産目録に記載し、長男が遺言で取得した土地は記載しません。
  2. 02
    受諾書面による調停成立を目指す 長男が調停期日に出席しない場合でも、他の相続人全員が調停条項案に合意していれば、裁判所から条項案を送付し、長男から同意書の返送を受けることで調停を成立させられます(実印・印鑑証明書が必要)。
  3. 03
    調停に代わる審判 調停不成立の場合、裁判所が職権で合理的な解決策を示す「調停に代わる審判」(家事手続法284条)を活用できます。当事者全員に告知され、適法な異議申立てがなければ確定します。
  4. 04
    審判への移行 調停に代わる審判に異議が出た場合は、通常の遺産分割審判に移行します。審判では、裁判所が一切の事情を考慮して遺産分割の内容を決定します。
実務的な見通し
長男は遺言により法定相続分以上の遺産を既に取得しているため、残余財産分割の協議では実質的に何も受け取れないケースが多く、受諾書面への署名に応じる可能性は十分あります。弁護士が間に入ることで、スムーズな解決が図れることも少なくありません。

自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 ご自身で対応 弁護士に依頼
遺言の法的効力確認 「相続させる旨」の遺言と遺贈の違いを正確に把握するのが難しい 遺言内容の法的解釈・効力を正確に判断確実
具体的相続分の計算 非遺産説・特別受益の持戻し類推適用の計算は専門知識が必要 遺産説・非遺産説の整理と具体的相続分の算定を法的に行う安心
協議書の作成 記載方法を誤ると後日紛争の原因になりやすい 事案に応じた適切な条項を作成リスク低減
長男が協議不参加の場合 調停申立書の作成・期日対応など手続きが複雑 調停代理・受諾書面の活用・審判対応まで一貫してサポート重要
相続登記との連携 遺言による登記と協議書による登記を別々に進める必要がある 司法書士と連携し、登記手続きもスムーズに進められる効率的
遺留分との調整 長男の遺言取得分が他の相続人の遺留分を侵害するか判断が難しい 遺留分侵害額の試算と対応方針を提示要確認
相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。

遺産分割・遺言・相続放棄など、相続全般の解説をまとめています

「遺言があるが残りの遺産分割が進まない」——ご相談ください

「相続させる旨の遺言」がある場合の残余財産分割は、学説上の論点や協議書の記載、長男の不参加対応など、専門的な判断が求められる場面が多くあります。高松市周辺の皆様の相続問題、よつば法律事務所が丁寧にサポートします。

※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

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