2026.04.06
コラム

遺産分割禁止の調停

投稿者:二川伸也

前提問題が未解決のまま遺産分割を迫られている——「分割禁止調停」という選択肢|よつば法律事務所

Estate Division Prohibition & Mediation

前提問題が未解決のまま遺産分割を迫られている——
「分割禁止調停」という選択肢

相続人・遺産の範囲が確定していないのに分割を急かされている場合、遺産分割禁止の調停という手段があります。その要件・手続き・期間制限をわかりやすく解説します。

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。

「父が亡くなったが、遺産に含まれるかどうか争いのある不動産があり、相続人の範囲も確定しきれていない。兄は早く分割しようと言っているが、前提問題を先に解決しないと正しい分割ができない——」

このようなご相談は、高松市周辺でも少なくありません。前提問題(相続人・遺産の範囲)が未解決のまま遺産分割を進めると、後から無効・取消しになるリスクもあります。

そのような場合に活用できるのが、「遺産分割禁止の調停」です。一定期間、遺産分割そのものを禁止する合意を家庭裁判所の調停で成立させることができます。

結論「特別の事由」があれば遺産分割の禁止を申し立てられます

家庭裁判所は「特別の事由」がある場合に、遺産の全部または一部の分割を禁止する審判ができます(民法第908条第4項)。調停でも同様の合意を成立させることができます。

「特別の事由」とはどのような場合か
✅ 認められる可能性がある例 遺産に含まれるかどうか争いがある財産について民事訴訟で先行して確定させる必要がある場合など、遺産の全部または一部を当分の間分割しない方が共同相続人全体にとって利益になると思われる特別な事情があるとき。
⚠ 認められない例 遺産の範囲について争いがあり民事訴訟が係属しているだけでは、「特別の事由」があるとはいえないとした裁判例があります(東京高決昭和60年6月13日)。単なる協議の難航だけでは認められません。
📌 調停と審判どちらで申し立てるか:審判の申立ても可能ですが、遺産分割に関する問題は当事者間の協議による解決が望ましいとされ、審判を申し立てても調停に付されることが多いため、通常は調停の申立てを行います。また調停では「特別の事由」の存在は申立ての要件ではありません。

手続き遺産分割禁止調停の申立てと期間の上限

申立ての手順

  1. 遺産分割禁止の調停申立書(家事手続別表2第13号)を作成し、申立て趣旨欄に禁止を求める期間を特定して記載します。
  2. 必要書類を添付して家庭裁判所に申し立てます。
  3. 調停が成立すれば、禁止期間と対象遺産を明記した調停条項が作成されます。
  4. 禁止期間中に前提問題(相続人の範囲・遺産の帰属等)を訴訟等で先行解決します。

申立てに必要な主な書類

  • 被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本(除籍・改製原戸籍を含む)
  • 相続人全員の戸籍謄本・住民票または戸籍附票
  • 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書・預貯金通帳の写しまたは残高証明書・有価証券写し等)

※ 申立費用:収入印紙1,200円+予納郵便切手/申立先:相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所

禁止期間の上限——最長5年・相続開始から10年まで

分割禁止の期間には法律上の制限があります。遺言・契約・審判による分割禁止の期間がいずれも5年以内とされていることから、調停による分割禁止期間も5年を超えることはできないと考えられています。

禁止期間(最長5年)
更新(最長5年)
10年上限

初回禁止期間:最長5年

更新も最長5年(繰り返し可)

終期は相続開始から10年まで
⚠ 10年の壁に注意:禁止期間の終期は相続開始時から10年を超えることができません。前回のコラムで解説した「相続開始から10年経過後の遺産分割は法定相続分によるルール」とも密接に関係します。禁止期間中に10年を迎えてしまわないよう、スケジュール管理が重要です。

調停が不成立の場合

当事者間で合意が成立しない場合、自動的に審判手続に移行します(家事事件手続法第272条第4項)。審判では「特別の事由」の存在が判断され、分割禁止の審判が出される場合があります。

比較自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合

分割禁止調停は、前提問題の訴訟と並行して進める必要があり、戦略的な判断が求められます。香川の皆様の状況に合わせて、下の表を参考にご検討ください。

比較項目 ご自身で対応 弁護士に依頼
「特別の事由」の判断 認められるか事前に判断できない 事案を踏まえ見通しを提示
申立書・理由の記載 説得力ある理由の記載が難しい 裁判所を納得させる内容で作成
禁止期間の設定 10年上限を見落とすリスク 前提問題解決のスケジュールと整合を取り設定
前提問題の訴訟との連携 調停と訴訟の並行管理が困難 訴訟・調停を一体的に戦略立案
費用目安 実費のみ(印紙代・郵送料など) 着手金+報酬(案件内容による)
こんな方に向いている 全員合意の見込みが高い場合 前提問題に争いがある・相手方が協力しない場合

※ 費用は事案の複雑さや財産額によって異なります。まずはお気軽にご相談ください。

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相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。

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「遺産の範囲に争いがあり今すぐ分割できない」「分割禁止調停を申し立てたいが認められるか不安」「前提問題の訴訟と並行してどう進めればいいかわからない」——そのようなお悩みを、私たちは丁寧にお聞きします。

分割禁止調停の申立てから前提問題の訴訟対応、その後の遺産分割まで、一貫してサポートいたします。

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※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

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