2026.04.06
コラム

遺産の一部分割

投稿者:二川伸也

一部の遺産だけ先に分割できる?「一部分割」の遺産分割協議書を弁護士が解説|よつば法律事務所

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
Partial Estate Division

一部の遺産だけ先に分割できる?
「一部分割」の遺産分割協議書と
借地権が争われているときの対処法

借地権の存否が訴訟で争われていて遺産分割が進まない——。決まった財産だけ先に分けて、残りは後で協議する方法があります。

父が亡くなり、遺産は自宅の土地建物と借地の2つ。ところが、借地については父の生前から貸主と訴訟になっており、借地権があるかどうかすら確定していない。このまま全遺産の分割を待っていたら、いつになっても話が進まない——。

こうした状況で有効なのが「一部分割」という方法です。民法907条は「遺産の全部または一部の分割を請求できる」と定めており、決まった財産だけ先に分けて、残りは後日協議することが法律上認められています。この記事では、一部分割の仕組みと協議書の書き方を弁護士が解説します。

「一部分割」とは何か——全部まとめなくていい理由

遺産分割は、原則として遺産全体を対象に行いますが、一部の財産について分割方法が決まらない場合や、権利関係が確定していない財産がある場合には、その財産を除いた残りの遺産だけ先に分割すること(一部分割)が認められています(民法907条1項・2項)。

✅ 先に分割できる

自宅の土地・建物

権利関係が明確で、相続人全員が合意できる財産。先に協議書を作成して分割を確定させます。

⏳ 後回しにする

借地権(訴訟中)

借地権の存否が訴訟で争われており、遺産かどうかすら未確定。訴訟の結果を待って後日協議します。

📌 一部分割はなぜ認められるの?
改正前の民法下でも判例・通説は一部分割を認めていましたが、令和元年の民法改正で条文上も明確化されました。借地権のように権利の存否が争われている財産は遺産かどうかが確定していないため、それ以外の財産を先に分割する「合理的な理由」があると判断されます。

一部分割の遺産分割協議書の作成ポイント

一部分割の協議書には、①先に分割する財産の内容と②残余財産(借地権等)の取り扱い方針、の両方を明記することが重要です。

協議書に盛り込む主な事項

  • 先に分割する財産の特定:土地・建物は登記事項証明書どおりに正確に記載します。
  • 代償金の定め:特定の相続人が不動産を取得する場合、他の相続人への代償金の金額・支払期限・振込先を明記します。
  • 残余財産の取り扱い方針:「訴訟の結果、借地権が認められた場合は改めて協議を続行する」など、後日の分割方法を記載します。
  • 相続人全員が実印で署名押印し、全員の印鑑登録証明書を添付します。
⚠ 残余財産の分割方法は2つある
後日、残余財産(借地権等)を分割するとき、①先に分割した財産とは別個独立に分割する方法と、②先に分割した遺産も含めて総合評価し直して各相続人の取得額を算定する方法とがあります。どちらにするか、あらかじめ協議書に明記しておくと後のトラブルを防げます。

一部分割の進め方:ステップ解説

  1. 分割できる財産と保留する財産を整理する
    権利関係が確定しているものと、訴訟・争いがあるものとに仕分けします。
  2. 先に分割できる財産について相続人全員で合意する
    誰がどの財産を取得するか、代償金をどう支払うかを決めます。
  3. 一部分割の遺産分割協議書を作成する
    先に分割する財産と、残余財産の後日協議方針を両方記載した協議書を作成します。相続人全員が実印で押印し、印鑑登録証明書を添付します。
  4. 先に分割した不動産の相続登記を行う
    不動産の所在地を管轄する法務局へ登記申請します。
  5. 残余財産(借地権等)について後日改めて協議する
    訴訟の結果などが確定したら、協議書に記載した方針に従って残余財産の分割協議を行います。

自分で手続きする場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 自分で手続き 弁護士に依頼
財産の仕分け判断 どの財産が「先に分割できる」かの判断が難しい 権利関係を整理し、一部分割の合理性を法的に判断
協議書の作成 残余財産の取り扱い方針の記載漏れが後のトラブルに 一部分割・残余分割の両方を見据えた書面を作成
訴訟への対応 借地権の訴訟対応を自分で行うのは困難 借地権訴訟の対応から遺産分割まで一貫してサポート
相続登記 書類収集・申請を自分で行う。補正対応も必要 司法書士と連携してスムーズに登記を完了
費用の目安 実費のみ(登録免許税・書類取得費等) 弁護士費用(内容により異なる。要相談)

まとめ:「全部決まるまで待つ」必要はありません

訴訟中の借地権など、権利関係が確定していない財産があるからといって、遺産分割全体を止めなければならないわけではありません。決まった財産から先に分けて、残りは後日改めて協議するという一部分割の方法を活用することで、相続手続きを前に進めることができます。

ただし、一部分割の協議書には残余財産の取り扱い方針も明記しておく必要があり、また借地権の訴訟対応と遺産分割の両方を同時に進めるのは、法的な知識が不可欠です。よつば法律事務所では、このような複雑な相続案件についても、弁護士が丁寧にお話を伺いながら対応いたします。香川・高松市近辺でお困りの方は、まずはお気軽にご連絡ください。

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※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。
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