2026.04.06
コラム

配偶者居住権の制度

投稿者:二川伸也

配偶者居住権とは?設定の手続きと注意点を弁護士が解説|よつば法律事務所

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
Spousal Residential Rights

父が亡くなった後も
母に自宅に住み続けてほしい
「配偶者居住権」の設定と手続き

令和2年4月施行の相続法改正で新設された「配偶者居住権」。設定要件・協議書の作成・登記申請まで、弁護士がわかりやすく解説します。

⚠ 令和2年4月1日以降の相続にのみ適用

父が亡くなり、母の今後の生活が心配。父と母が暮らしていた自宅には、母に住み続けてほしい。一方で、子どもたちへの遺産も確保したい——。そんな状況に対応するために生まれたのが「配偶者居住権」です。

この制度を使えば、配偶者(母)は無償で自宅に住み続けながら、所有権は子どもに移転することができます。その結果、配偶者が生活費として使える預貯金なども確保しやすくなります。香川・高松市周辺でもご相談が増えているテーマです。この記事では、設定の要件・手順・注意点を整理してお伝えします。

従来は配偶者が自宅(建物)を相続すると、それだけで相続分を多く使ってしまい、生活費に充てる預貯金が不足することがありました。配偶者居住権を設定すれば、自宅の「住む権利」だけを取得し、建物の所有権は子どもが持つことができます。配偶者はより多くの金融資産を取得でき、生活保障が厚くなります。

配偶者居住権が設定できる3つの要件

配偶者居住権は令和2年4月1日以降に開始した相続にのみ適用されます(それ以前の相続・遺贈・死因贈与には適用なし)。設定には以下3つの要件を満たす必要があります。

REQUIREMENT 01

相続開始時に、その建物に居住していたこと。入院中でも、その建物が生活の本拠であると認められれば要件を満たします。

REQUIREMENT 02

被相続人が単独所有、または配偶者と共有していた建物であること。第三者との共有建物には設定できません。

REQUIREMENT 03

遺産分割協議・調停・審判、または遺贈・死因贈与によって配偶者居住権を取得させることが合意・決定されていること。

⚠ 「相続させる旨の遺言」では配偶者居住権を設定できません
いわゆる特定財産承継遺言(「〇〇を相続させる」という形式)では、配偶者居住権の設定はできません。遺言で設定する場合は「遺贈」の形式が必要です。ただし「配偶者に配偶者居住権を相続させる」と記載されていても、遺言全体からみて遺贈の趣旨と解される場合は登記申請できることがあります。

設定の手続き:4つのステップ

  1. 遺産分割協議で配偶者居住権の取得を合意する
    相続人全員で話し合い、配偶者居住権の存続期間(終身 or 年数)や建物の所有者を決めます。
  2. 遺産分割協議書を作成する
    「配偶者居住権」の存続期間、所有権を取得する相続人、代償金の支払い内容などを明記します。相続人全員が実印で署名押印し、印鑑登録証明書を添付します。
  3. 協議がまとまらない場合は調停・審判を申立てる
    家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、事情説明書に配偶者居住権取得の希望を記載します。収入印紙1,200円・予納郵便切手が必要です。
  4. 配偶者居住権の設定登記を申請する
    法務局に登記申請します。登録免許税は不動産価額の1000分の2です。

登記申請の添付書類

  • 登記原因証明情報(遺産分割協議書・調停調書謄本・審判書正本・遺言書・死因贈与契約書等)
  • 登記識別情報
  • 印鑑登録証明書
  • 代理権限証明情報(委任状)
📌 配偶者居住権の存続期間と登記記載
存続期間の定めがない場合は「配偶者居住権者の死亡時まで」が終身存続となります。年数を定める場合は「〇年〇月〇日から〇年または配偶者居住権者の死亡時までのうち、いずれか短い期間」と記載します。存続期間は登記事項となりますので、協議書・調停条項にも必ず明記してください。

配偶者居住権を取得した後に知っておくべきこと

  • 建物全部を無償で使用・収益できますが、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって使用しなければなりません(民法1032条1項)。
  • 第三者に転貸・使用させるには所有者の承諾が必要です。無断で行うと所有者から配偶者居住権を消滅させられることがあります。
  • 通常の修繕費・固定資産税は配偶者が負担します。特別の費用(大規模修繕など)は配偶者居住権消滅時に所有者が償還します。
  • 配偶者居住権は譲渡・相続できません。配偶者が亡くなれば当然消滅し、次の世代には引き継がれません。
  • 所有者には設定登記への協力義務があります(民法1031条1項)。また第三者への対抗要件として登記が必要です。

自分で手続きする場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 自分で手続き 弁護士に依頼
財産評価の算出 法定耐用年数・ライプニッツ係数等を用いた複雑な計算が必要 評価額の算定から合意内容の調整までサポート
協議書・条項の作成 存続期間・代償金・登記義務などの記載漏れが後のトラブルに 実務に即した書式で正確に作成。記載漏れを防止
調停・審判対応 取得希望の意思表示・書類準備を自分で対応する必要あり 代理人として申立・期日対応を一括でサポート
設定登記 司法書士への依頼が別途必要になることも 司法書士と連携してスムーズに登記完了まで対応
費用の目安 実費のみ(登録免許税・書類取得費等) 弁護士費用(内容により異なる。要相談)

まとめ:配偶者の生活を守る選択肢として、ぜひご検討を

配偶者居住権は、高齢化社会の進展を背景に令和2年に新設された比較的新しい制度です。うまく活用すれば、配偶者の住居と生活費の両方を確保しながら、他の相続人への遺産分配もバランスよく行うことができます。

一方で、財産評価の計算や協議書の記載方法、設定登記の手続きなど、専門的な知識が必要な場面も多くあります。よつば法律事務所では、配偶者居住権の設定を含む遺産分割全般について、丁寧にご相談をお受けしています。香川・高松市周辺でお悩みの方は、お気軽にご連絡ください。

LEGAL CONSULTATION

まずはお気軽にご相談ください

配偶者居住権の設定・遺産分割協議・調停申立てなど、相続に関するお悩みはよつば法律事務所にお任せください。

※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。
コラム一覧へ戻る

NEW

カテゴリ

サブカテゴリ

ARCHIVE