2026.04.06
コラム

遺産分割後の相続放棄

投稿者:二川伸也

遺産分割後に借金が発覚|錯誤取消しと相続放棄の方法を弁護士が解説|よつば法律事務所

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。

Inheritance Waiver — Rescission of Division Agreement

遺産分割後に多額の借金が発覚
もう手遅れ?いいえ、まだ手段があります
― 錯誤取消しと相続放棄の方法を弁護士が解説 ―

よつば法律事務所|香川県高松市の相続専門コラム


「遺産分割協議を終えたあとに、父の債権者から突然、多額の保証債務の返済を請求する内容証明郵便が届いた――」高松市周辺にも、こうした突然の事態に直面して途方に暮れているご相談者の方がいらっしゃいます。

「遺産は何も受け取っていないのに、なぜ借金だけ返済しなければならないのか」という疑問はもっともです。しかし、相続債務(可分債務)は遺産分割を経ることなく、相続開始と同時に各相続人に法定相続分に応じて帰属するのが原則です(大判昭5・12・4)。

ただし、遺産分割協議に錯誤があった場合は、その取消しを主張したうえで相続放棄できる可能性があります。この記事では、その手順と要件を弁護士の視点から解説します。

なぜ「遺産分割後」に相続放棄が難しいのか

父の遺産はすべて兄が相続する内容の遺産分割協議書に署名・押印した。その後、父の連帯保証債務5,000万円が判明し、債権者から自分宛に返済請求が届いた。

遺産分割協議は法定単純承認事由(民法921条1号)に該当します。単純承認をした後は原則として相続放棄ができません。借金を受け取った財産がなくても、協議書に署名した時点で「相続を承認した」と扱われるわけです。

⚠ 債務だけは「遺産分割で免れる」は通用しません 「自分は遺産を受け取っていないから借金も引き継がない」は誤解です。借金などの可分債務は、相続開始と同時に各相続人へ法定相続分の割合で自動的に帰属します。遺産分割協議で「借金は兄が負担する」と決めても、債権者には対抗できません
通常の場合(協議前に放棄)
相続開始を知ってから3か月以内に相続放棄を申述すれば、一切の権利義務を承継せずに済む。
今回のケース(協議後に債務判明)
遺産分割協議が単純承認とみなされ、原則として相続放棄はできない。ただし錯誤取消しという道が残っている。

錯誤取消しによる突破口―民法95条の活用

遺産分割協議を成立させた際に「債務がない」と誤信していたこと、かつ知っていれば協議しなかったという事情があれば、民法95条1項2号の「基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤」を理由に遺産分割協議を取り消すことができます。

協議が取り消されて無効となれば、法定単純承認の効果も発生しなかったとみる余地が生まれ、債務の存在を知った日から3か月以内に相続放棄の申述をすることが認められる可能性があります(大阪高決平10・2・9参照)。

💡 熟慮期間の起算点は「債務の存在を知った日」 このケースでは、「自己のために相続の開始があったことを知った時」(民法915条①)は債権者から返済請求を受け取り、多額の債務の存在を初めて知った日と主張することになります。その日から3か月以内に申述書を提出することが重要です。

申述書作成の3つのポイント

  1. 1
    遺産分割協議が錯誤により取り消されるべきことを主張・立証する 「債務がないと誤信して協議した」「知っていれば協議せず放棄していた」という事情を具体的に記載します。遺産分割協議書と債権者からの通知書(内容証明郵便等)を疎明資料として添付します。
  2. 2
    熟慮期間の起算点を明確に特定する 「債権者から請求書を受け取った○年○月○日が、債務の存在を知った日」であり、その日から3か月以内の申述であることを明記します。客観的な日付を示す資料(内容証明郵便の受取日等)が重要です。
  3. 3
    申述受理の審判が「公証行為」であることを強調する 申述受理の審判は実体的権利関係を確定するものではなく、適式な申述がなされたことを公証するものです(最判昭29・12・24)。実質的要件について「一応裏付ける程度の資料」があれば受理すべきとされています(大阪高決平10・2・9)。申述書でこの点を主張することで受理の可能性を高めます。

申述時の主な添付書類(本ケース特有のもの)

  • 申述人の戸籍謄本(3か月以内のもの)
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 遺産分割協議書(錯誤取消しの対象であることを示すため)
  • 債権者からの内容証明郵便等(熟慮期間の起算点を示す客観的資料)

自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 ご自身で対応 弁護士に依頼
錯誤取消しの判断 取消しの要件該当性の判断が難しい 事実関係を整理して要件を的確に判断
申述書の理由記載 説得力のある記述が困難 裁判例を踏まえた説得力ある申述書を作成
起算点の特定 誤った起算点を選びやすい 最も有利な起算点を選定して主張
却下リスクへの対応 却下後の対処が困難 即時抗告を含め継続サポート
債権者への対応 直接交渉が精神的に辛い 受任後は窓口を一本化して対応
費用 印紙代800円のみ 弁護士報酬が発生

※ 上記は一般的な目安です。個別の事情によって異なります。

⚠ 類似事案で申述が却下された裁判例も存在します 遺産分割協議後の相続放棄申述については、受理した裁判例(大阪高決平10・2・9)と却下した裁判例(東京高決平14・1・16)の双方があります。結論は個別の事情に左右されるため、速やかに弁護士へご相談いただくことを強くお勧めします。

まずはよつば法律事務所にご相談ください

「遺産分割後に債権者から請求が来た」「内容証明郵便を受け取ってから日数が経過している」「3か月以内に申述できるか不安」――香川の皆様のそのようなお悩みに、よつば法律事務所が丁寧にお答えします。

このケースでは時間との戦いです。債権者からの請求書を受け取った日から3か月という期限があり、かつ申述書の内容も通常より格段に複雑になります。「まだ間に合うかもしれない」と思ったら、すぐにご連絡ください。

ご予約はお電話で 087-802-2936
※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。
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