建物の遺産分割
店舗兼自宅など分けにくい財産を相続するとき
代償分割・分割禁止の手続きを弁護士が解説
高松市・よつば法律事務所|弁護士による相続コラム
「店舗兼自宅を兄弟2人で半分ずつに分けろといわれても、それでは家業が続けられない」——こうした声はよくお聞きします。不動産をそのまま2つに切り分けることは現実には困難で、かといって売却すれば生活や仕事の基盤が失われます。
このコラムでは、現物分割が難しい相続財産がある場合の3つの対応方法を、具体的な手続きとともに解説します。
そもそも「現物分割」が難しい財産とは
相続財産の分割方法には、大きく分けて3種類あります。どの方法が適切かは、財産の性質・相続人の状況・各自の意向によって異なります。
財産をそのまま分ける。土地の一部を切り分けるなど。
売却して現金化し、各相続人が金銭を受け取る。
1人が財産を取得し、他の相続人に代償金を支払う。
店舗兼自宅は「現物分割も換価も難しい」典型例です。相続人全員が家業に携わっており、施設が営業の基盤になっている場合は、代償分割または一時的な分割禁止が現実的な選択肢となります。
まず話し合い——遺産分割協議の申入れ
相続が発生したら、まず相続人間で遺産分割協議を行います。被相続人が遺言で禁じていない限り、相続人はいつでも協議による分割を求めることができます(民法第907条)。
協議が成立した場合は遺産分割協議書を作成します。成立しない場合は家庭裁判所に分割の調停・審判を申し立てることができます。
協議申入れ書に記載する内容
- 相続が発生した事実(被相続人名・死亡日)
- 相続人が誰であるかの確認
- 対象となる遺産の概要
- 協議の日時・場所の提案
即時分割が困難なら——遺産分割禁止の申立て
家業の継続や相続人の生活状況から、今すぐ分割することが適切でない場合は、遺産分割を一定期間禁止する手続きをとることができます(民法第908条4項)。
家庭裁判所が遺産分割禁止を認めるには「特別な事由」が必要です。裁判例(東京高決昭60・6・13)によれば、相続財産が営業施設であり相続人全員がその経営に従事している場合は、この「特別な事由」にあたると考えられています。
遺産分割禁止の主なルール
- 禁止期間は最長5年以内(相続開始から10年が上限)
- 5年以内に事由が解消しなければ、再度5年以内の禁止を申し立てられる
- 第三者に対抗するためには登記が必要(相続登記後に共有物不分割特約の変更登記申請)
- 申立費用:収入印紙1,200円+予納郵便切手
- 申立先:相手方住所地を管轄する家庭裁判所
裁判所が職権で分割禁止を命じることは少ないため、必要な場合は当事者側から積極的に申し立てる必要があります。申立てのタイミングを逃すと、相手方が先に分割請求を進めてしまうリスクがあります。
1人が取得して解決——代償分割の仕組み
現物分割も換価分割も困難な場合の現実的な解決策が「代償分割」です。居住・営業を続けたい相続人が財産を単独で取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払います。
代償分割の手順
-
1財産の評価額を確認する 不動産鑑定・固定資産評価証明書・路線価などを参考に、対象財産の価値を把握する。
-
2代償金の額を算出する 財産評価額に対する他の相続人の法定相続分に相当する金額を代償金とするのが基本。
-
3支払能力を確認する 代償分割には取得者に代償金の支払能力があることが前提(最決平12・9・7)。金融機関からの融資も含めて検討する。
-
4遺産分割協議書または調停調書に記載する 取得する財産・代償金の金額・支払期日・振込先口座を明確に記載する。
代償金が未払いになっても、遺産分割協議の無効や解除を主張することはできません(民法の判例上の考え方)。代償金を受け取る側は、支払期日・担保の設定などを協議書に明記しておくことが重要です。
自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較
代償分割や遺産分割禁止は、相続人間の利害が複雑に絡み合います。高松市周辺で家業の承継や不動産の単独取得を検討されている方は、早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。
| 対応場面 | 自分で対応 | 弁護士に依頼 |
|---|---|---|
| 遺産の評価・代償金の算出 | 根拠のある金額算定が難しい | 適正な評価に基づき算出・交渉 |
| 相手方との協議・交渉 | 感情的対立になりやすい | 弁護士が代理人として交渉 |
| 遺産分割禁止の申立て | タイミング・要件の判断が困難 | 最適なタイミングで申立て対応 |
| 協議書・調停条項の作成 | 記載漏れ・不備のリスク | 法的に有効な書面を作成 |
| 代償金未払い時のリスク対策 | 対処法が分からない | 担保設定・期限の利益喪失条項など提案 |
| 費用 | 実費のみ | 着手金・報酬金が発生 |
「家業を続けたい」「1人で引き継ぎたい」
そのご希望、弁護士と一緒に実現しましょう
代償分割の金額設定・遺産分割禁止の申立て・相手方との交渉まで、よつば法律事務所の弁護士が全面的にサポートします。
お電話での相談受付|まずはお気軽にお問い合わせください
NEW
-
2026年04月06日 14:58:00任意後見契約と相続人認知症になる前に任意後見契約を結...
-
2026年04月06日 14:58:00判断能力不十分な相続人知的障害のある息子が相続人に。保...
-
2026年04月06日 14:57:00判断能力がない相続人認知症の母が相続人に。成年後見人...
-
2026年04月06日 14:56:00親権者がいない相続人親権者が亡くなり未成年の弟が相続...
-
2026年04月06日 14:56:00親権者と子が相続人未成年の子が相続人のとき。親権者...
-
2026年04月06日 14:55:00相続人が行方不明相続人が行方不明で遺産分割できな...
-
2026年04月06日 14:54:00遺言と異なる遺産分割遺言と違う遺産分割はできる?相続...
-
2026年04月06日 14:53:00新たな財産の発見遺産分割後に新たな財産が見つかっ...
-
2026年04月06日 14:53:00名義預金と遺産分割妻や孫の名義の預金も遺産になる?...
-
2026年04月06日 14:52:00介護の負担と遺産分割親の介護を条件に遺産を多く相続さ...
-
2026年04月06日 14:51:00自宅の遺産分割自宅だけの相続、住み続けながら弟...
-
2026年04月06日 14:50:00土地相続と換価分割遺産の土地を売って代金を分ける「...
-
2026年04月06日 14:49:00土地相続と代償分割土地を一人で相続して代償金を支払...
-
2026年04月06日 14:48:00遺産の一部分割一部の遺産だけ先に分割できる?「...
-
2026年04月06日 14:48:00配偶者居住権の制度配偶者居住権とは?設定の手続きと...
-
2026年04月06日 14:47:00現金を使われそうな場合遺産の現金を使われてしまう前に|...
-
2026年04月06日 14:46:00共有名義となった土地相続した土地を兄弟で共有するとき...
-
2026年04月06日 14:45:00国債の相続相続した国債はどう分ける?手続き...
-
2026年04月06日 14:44:00遺産分割協議書の作り方遺産分割協議書の作成方法|不動産...
-
2026年04月06日 14:43:00特別縁故者制度相続放棄をしても財産を受け取れる...
-
2026年04月06日 14:42:00相続財産管理人制度相続財産管理人とは?遠方に住む相...
-
2026年04月06日 12:05:00遺贈を放棄したいとき遺贈を放棄したい|包括遺贈と特定...
-
2026年04月06日 12:04:00相続放棄の有無を確認義妹や甥が相続放棄したか調べたい...
-
2026年04月06日 12:04:00二重の相続資格と相続放棄養子かつ孫として二重の相続資格が...
-
2026年04月06日 12:03:00再転相続の相続放棄祖父の借金は相続したくない・父の...
-
2026年04月06日 12:02:00遺産分割後の相続放棄遺産分割後に借金が発覚|錯誤取消...
-
2026年04月06日 12:01:00相続放棄の手続親の借金を相続しないために|相続...
-
2026年04月06日 12:00:00相続放棄と財産管理義務相続放棄しても自宅を管理し続ける...
-
2026年04月06日 11:59:00熟慮期間の伸長相続放棄の3か月が間に合わない|...
-
2026年04月06日 11:58:00包括遺贈と限定承認包括遺贈を受けたが借金も引き継ぐ...
-
2026年04月06日 11:56:00限定承認という選択肢相続財産に借金がある場合の限定承...
-
2026年04月06日 11:55:00調停中の相続分譲渡遺産分割調停中に相続分を譲渡した...
-
2026年04月06日 11:51:00調停中の相続分放棄遺産分割調停中に相続分を放棄した...
-
2026年04月04日 10:36:00相続財産が譲渡された場合兄が相続土地の持分を無断で第三者...
-
2026年04月04日 10:34:00相続分の取戻し弟が相続分を第三者に譲渡してしま...
-
2026年04月04日 10:29:00相続人への相続分譲渡相続分を他の相続人に譲渡する——家...
-
2026年04月04日 10:22:00第三者への相続分譲渡相続分を第三者に譲渡して借金を清...
-
2026年04月04日 10:19:00死後事務委任と相続人の権利死後事務委任契約があっても相続人...
-
2026年04月04日 10:17:00相続財産の分離で債権を守る2お金を貸した相手の親が多額の借金...
-
2026年04月04日 10:15:00相続財産の分離で債権を守るお金を貸した相手が亡くなった——相...
-
2026年04月04日 10:13:00名義預金の相続子供名義の預金は相続財産になる?...
-
2026年04月04日 10:11:00貸金庫の相続銀行の貸金庫に相続財産がある場合...
-
2026年04月04日 10:06:00建物の遺産分割現物分割が難しい相続財産があると...
-
2026年04月04日 10:00:00ゴルフ会員権の相続相続財産にゴルフ会員権があるとき...
-
2026年04月04日 09:59:00遺産分割の禁止相続財産に係争中の土地があるとき...
-
2026年04月04日 09:54:00マンション解約と死後事務委任死後事務委任契約で賃貸マンション...
-
2026年04月04日 09:52:00借地借家の相続相続財産に賃借物件があるとき|高...
-
2026年04月04日 09:48:00賃貸物件の相続相続財産に賃貸物件があるとき|高...
-
2026年04月04日 09:36:00相続債務の調査相続債務の調査方法|高松市の弁護...
-
2026年04月03日 09:40:00預貯金や有価証券の財産調査相続で預貯金・株・国債を調べる方...