「遺言執行者に指定されているが、相続人の一人から遺言の無効が主張されている。このまま執行を進めていいのだろうか……」そのような状況に置かれた方は、進退に迷われていることと思います。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために選任・指定された重要な役割を担います。しかし、遺言の有効性自体が争われているときは、安易に執行を進めることも、かといって放置することも、どちらも大きなリスクをはらんでいます。このコラムでは、遺言の無効が主張されている場面での遺言執行者の正しい対応と、無効判決が確定した後に取るべき手続きについて、弁護士の視点からわかりやすく解説します。高松市周辺で遺言執行者としての役割を担われている方に、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
遺言の無効が争われているとき、遺言執行者はどうすべきか
遺言執行者は、善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって遺言の有効性を慎重に判断する義務があります(民法644条・1012条3項)。無効を主張する者がいる以上、有効・無効のどちらかに軽率に踏み切るのではなく、法的根拠を十分に検討した上で対応方針を決めることが求められます。
主な遺言の無効原因(参考)
遺言が無効となりうる主な事由は以下のとおりです。
- 方式違反(全文自書でない、日付・押印の不備など)
- 遺言能力の欠如(15歳未満の者、意思能力を欠く状態での作成)
- 後の遺言・法律行為との抵触(より新しい遺言が存在する場合など)
- 公序良俗違反
- 受遺者による遺贈の放棄、目的物の滅失(後発的無効)
- 偽造・詐欺・強迫などによる意思表示の瑕疵
遺言執行者が取りうる対応の分岐
無効の主張を受けたとき、遺言執行者には大きく3つの対応があります。
- 遺言は無効と判断した場合:執行不能として任務終了の処理を行い、利害関係人に通知する
- 判断が定まらない場合:訴訟による法律関係の確定まで執行を留保する(この間に執行を進めることは避けるべき)
- 遺言は有効と判断した場合:遺言内容に従った執行行為を継続する(ただし、後に無効判決が出た場合は原状回復義務が生じる)
なお、遺言執行者自身が遺言の無効原因があると判断した場合、遺言執行者から自ら遺言無効確認訴訟を提起することも可能とされています。
遺言無効判決が確定した後に遺言執行者が取るべき手続き
遺言を無効とする判決が確定したとき、遺言執行者はすみやかに以下の3つの手続きを行う必要があります。
① 執行不能による任務終了の通知
受遺者・法定相続人など利害関係人全員に対して、遺言が無効と確認されたことにより執行が不能となり、任務が終了した旨を書面で通知します(民法655条・1020条)。通知書には、無効と判断した理由と根拠資料(判決書の写しなど)を添付します。
② 執行不能に至る顛末(経過・結果)の報告
執行不能と判断するまでの間に何らかの執行行為を行っていた場合は、その行為の内容・結果・原状回復措置の内容を利害関係人に報告します(民法645条・1012条3項)。金銭の出入りがあった場合は、収支計算書の作成・提出が必要です。
③ 保管品・管理物の引渡し
執行のために保管・管理していた財産(通帳・不動産関係書類・その他の物)がある場合は、相続人等に速やかに返還・引き渡しを行います(民法646条・1012条3項)。
「判断を誤った」場合の法的リスク——遺言執行者が注意すべき点
| 遺言執行者の当初の判断 | 後に確定した判決 | 遺言執行者が取るべき対応 | 善管注意義務違反のリスク |
|---|---|---|---|
| 遺言は無効と判断し、執行を留保 | 遺言を有効とする判決が確定 | 速やかに遺言の執行に着手する | 重大な過失がなければ、義務違反とならない可能性が高い |
| 遺言は有効と判断し、執行を実施 | 遺言を無効とする判決が確定 | 執行を中止し、可能な限り原状回復措置を施す。その後、任務終了通知・顛末報告・引渡しを行う | 原状回復できなかった場合、判断状況によっては善管注意義務違反が問われる可能性がある |
遺言執行者が善管注意義務違反を問われるかどうかは、「重大な過失」の有無が判断の分かれ目です。判断の難しい事案ほど、早期に法律の専門家に相談し、適切な対応方針を立てることが重要です。
まとめ|遺言執行者としてのお悩みは、よつば法律事務所にご相談ください
遺言の有効性が争われている場面で、遺言執行者が取るべき対応を誤ると、後に善管注意義務違反として損害賠償を求められるリスクがあります。また、無効判決確定後の任務終了通知・顛末報告・保管品の引渡しといった一連の手続きも、適切な書面作成と報告内容が求められます。
「遺言の無効を主張されているが、このまま執行を進めてよいか」「無効判決が出たが、どのような手続きを取ればよいか」といったお悩みをお持ちの遺言執行者の方は、よつば法律事務所(香川県高松市)にどうぞお気軽にご相談ください。香川の皆様の相続に関するご事情を丁寧にお聞きした上で、遺言執行者としての適切な対応を一緒に考えてまいります。