2026.04.02
コラム

無効と思われる遺言書が見つかったとき

投稿者:二川伸也

「夫が危篤状態だったのに、その時期に書いたとされる遺言書が出てきた」「筆跡が明らかにおかしい——これは偽造ではないか」。そのような疑念を抱えながら、どこに相談すればよいかわからず、不安な日々を過ごされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

遺言書の内容が偽造・無効だと思われる場合でも、感情的に対応するのではなく、法律に定められた手順を踏んで争うことが重要です。このコラムでは、「無効と疑われる遺言書」が見つかったときに取るべきステップを、弁護士の視点から順を追って解説します。香川の皆様の大切な相続を守るために、ぜひ参考にしてください。

「おかしい」と思っても、まず検認の手続きが必要です

遺言書の内容が偽造であり無効だと確信していても、自筆証書遺言(手書きの遺言書)は、まず家庭裁判所に提出して「検認」の手続きを取ることが法律上の義務です(民法1004条)。検認を経ずに遺言を執行したり、家庭裁判所外で封書を開封したりすると、5万円以下の過料に処せられる場合があります(民法1005条)。

検認とは、遺言書の現状(用紙・筆記用具・日付・印・内容など)を家庭裁判所が公的に記録・保全する手続きです。遺言の有効・無効を判断するものではありません。検認を経た後でも、遺言の無効を争うことは十分に可能です。

検認申立てに必要な書類

  • 遺言書検認申立書(家庭裁判所備え付けの書式)
  • 遺言者の出生から死亡までの全戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 収入印紙800円(遺言書1通につき)+予納郵便切手

申立先は、相続開始地を管轄する家庭裁判所です(高松市の場合は高松家庭裁判所)。なお、法定相続情報一覧図の写しで戸籍謄本の一部を代用できる場合がありますが、事前に裁判所へご確認ください。

遺言無効を争うための3つのステップ

STEP 1|遺言無効確認の調停を申し立てる

検認が完了した後、遺言の無効を主張したい場合は、まず家庭裁判所に「遺言無効確認調停」を申し立てることが原則とされています(家事事件手続法244条・257条)。

  • 申立先:相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(または当事者が合意で定める裁判所)
  • 申立費用:収入印紙1,200円+予納郵便切手
  • 必要書類:申立人・相手方・遺言者の戸籍謄本、検認済遺言書の写し、遺産目録

調停では調停委員会が双方の主張を聞き、合意が成立すれば調停調書が作成され、確定判決と同一の効力が生じます。ただし、遺言の無効を争う事案では、当事者間の対立が激しいことが多く、調停で合意が成立する可能性は低いのが実情です。

STEP 2|調停が不成立となった場合、「調停不成立証明書」を取得する

調停が不成立に終わった場合や審判がなされない場合には、次の訴訟手続きに進むために「調停不成立証明書」の交付を家庭裁判所に申請します。

  • 申請先:遺言無効確認調停を扱った家庭裁判所
  • 申請費用:収入印紙150円+郵便切手
  • 申請者:遺言を無効と主張する関係人

なお、調停が終了した旨の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起したときは、調停申立て時に訴えの提起があったとみなされます。手続きの流れを弁護士とともに確認しながら進めることが重要です。

STEP 3|地方裁判所に「遺言無効確認の訴え」を提起する

調停で解決しない場合は、地方裁判所に遺言無効確認請求訴訟を提起します。訴訟では、遺言の無効原因を具体的に主張・立証していくことになります。

主な無効原因として争われる主要な論点は以下のとおりです。

  • 遺言の方式違反(全文自書でない、日付の不実記載、押印の不備など)
  • 遺言書の偽造(筆跡が本人のものでない)——筆跡鑑定が行われることが多い
  • 遺言能力の不存在(意識混濁・認知症等により遺言当時に判断能力がなかった)
  • 錯誤・詐欺・強迫による意思表示
  • 公序良俗違反

訴訟費用(収入印紙額)は、原告が主張する経済的利益の額によって異なります。財産上の請求の場合はその財産評価額、非財産上の請求の場合は160万円とみなされ、印紙額は1万3,000円となります。

遺言の無効を争う手続きの流れと費用の目安

手続き 申立先・提起先 主な費用(印紙代) ポイント
①遺言書の検認申立て 管轄の家庭裁判所 800円(遺言書1通) 無効でも必ず最初に必要。有効・無効の判断はしない
②遺言無効確認調停の申立て 相手方住所地の家庭裁判所 1,200円 訴訟の前置として原則必要。合意成立なら確定判決と同効力
③調停不成立証明書の申請 調停を扱った家庭裁判所 150円 訴訟提起に必要。調停終了通知から2週間以内に提訴で遡及効あり
④遺言無効確認訴訟の提起 被告住所地の地方裁判所 財産額に応じた印紙額(目安:1万3,000円〜) 筆跡鑑定・診断書・証人尋問などで立証していく

上記の費用はあくまで裁判所に納める印紙代の目安です。実際には弁護士費用や鑑定費用なども発生します。早期に弁護士に相談することで、手続きの見通しと費用感を把握できます。

まとめ|遺言の有効性にお悩みの方は、よつば法律事務所にご相談ください

「この遺言書はおかしい」と感じたとき、感情的に相手方と直接対立してしまうと、後の法的手続きに悪影響を及ぼすことがあります。大切なのは、正しい手順で証拠を保全し、法的な手続きを通じて無効を主張することです。

遺言書の偽造や遺言能力の不存在を立証するためには、筆跡鑑定・カルテ・診断書・医療記録など、専門的な証拠収集が欠かせません。こうした対応は、できるだけ早い段階から弁護士に依頼されることを強くお勧めします。

高松市周辺で「遺言書の内容に納得できない」「偽造の疑いがある」「遺言能力がなかったはずだ」といったお悩みをお持ちの方は、よつば法律事務所(香川県高松市)にどうぞお気軽にご相談ください。初回相談から、皆さまの状況に寄り添い、最善の解決策をともに考えてまいります。

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