2026.04.01
コラム

遺言代用信託 相続手続きコラム

投稿者:二川伸也

「もし自分に何かあったとき、妻がすぐにお金を引き出せるだろうか」——高齢のご夫婦からこうしたご相談をいただくことがあります。

実は、亡くなった方の預貯金は、相続手続きが完了するまで簡単には引き出せません。葬儀費用や当面の生活費が必要なのに、手続きに時間がかかって困った、というケースは珍しくないのです。

この記事では、そうした問題をあらかじめ解決しておける「遺言代用信託」という仕組みについて解説します。

なぜ死亡後すぐに預貯金を引き出せないのか

家族が亡くなると、金融機関はその方の口座を凍結します。凍結後に払い戻しを受けるには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を揃えて金融機関に提出するなど、煩雑な相続手続きを経なければなりません。

この手続きには時間がかかるため、葬儀費用や遺族の生活費をすぐに確保できないという問題が生じます。高松市周辺でも、こうしたトラブルに直面するご家族は少なくありません。

遺言代用信託とは?

遺言代用信託とは、生前に自分(委託者)の財産を信頼できる人や機関(受託者)に信託しておき、自分が亡くなった後は配偶者や子などを受益者として財産の管理・給付を行ってもらう契約のことです(信託法90条)。

「遺言」という名前がついていますが、これは遺言ではなく契約です。そのため、遺言に必要な厳格な方式(自筆・署名・押印など)を守らなくても有効であり、手続きも柔軟に設計できます。

2種類の遺言代用信託

  • ①受益権取得型:委託者の死亡時に、指定された者が受益権を取得する信託
  • ②給付開始型:委託者の死亡以後、受益者が信託財産からの給付を受ける信託

遺言代用信託の主なメリット

  • 死亡直後から葬儀費用・生活費を信託財産から工面できる
  • 煩雑な相続手続きが不要(戸籍謄本の収集・金融機関への提出など)
  • 遺言執行手続きが不要なため、迅速に財産を給付できる
  • 家族・専門職など、受託者を柔軟に選べる
  • 信託銀行等の既製商品を利用することもできる

遺言信託との違いを比較

項目 遺言代用信託 遺言信託
法的性質 契約 遺言
方式の厳格さ なし(柔軟に設計可能) 民法の厳格な方式が必要
遺言執行手続き 不要 必要(時間がかかる)
死亡直後の資金確保 可能 困難なことが多い
紛争リスク 比較的低い 執行時に紛争が生じる可能性あり

税金と遺留分の注意点

税金について

遺言代用信託は、契約締結時点では委託者と受益者が同一のため、この時点では課税されません。委託者が亡くなった後、受益者が受益権を遺贈されたものとみなされ、相続税の対象となります(相続税法9条の2)。

遺留分との関係

遺言代用信託は死因贈与と類似した機能を持つため、遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります(民法1046条)。他の相続人との間でトラブルが生じないよう、遺留分以上の財産を別途残しておくことを検討しておくとよいでしょう。

まとめ

  • 死亡後の預貯金は相続手続きが完了するまで原則引き出せない
  • 遺言代用信託を使えば、死亡直後から葬儀費用・生活費を確保できる
  • 遺言ではなく「契約」なので、厳格な方式は不要
  • 遺言執行手続きが不要で、迅速に財産を給付できる
  • 死亡後に受益権を取得した場合は相続税の対象となる
  • 他の相続人の遺留分には注意が必要

「妻に手続きで苦労させたくない」「死後すぐに家族がお金を使えるようにしておきたい」とお考えの香川の皆様、遺言代用信託は有力な選択肢の一つです。どのような方法が自分の家族に合っているか、弁護士に相談しながら検討されることをおすすめします。

高松市・香川県で相続・財産管理についてお悩みの方は、ぜひよつば法律事務所にお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。具体的なご事情については、弁護士にご相談ください。

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