2026.04.07
コラム

遺留分の放棄

投稿者:二川伸也

遺留分を放棄したい——相続開始前と開始後で手続きはどう違う?【高松・香川の弁護士が解説】

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
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遺留分を放棄したい——
相続開始「前」と「後」で、手続きはまったく違います

生前の土地贈与を受けている場合の遺留分放棄、代襲相続への影響、相続人の地位との関係まで——高松市の弁護士が解説します


「父からすでに土地と建物建築資金の贈与を受けているので、遺留分は放棄するつもりだ。でも、どうやって手続きをすればいいのか分からない」

遺留分の放棄は、相続開始前(父が存命中)と相続開始後(父の死亡後)で、必要な手続きがまったく異なります。また、放棄した後に自分が先に亡くなった場合の取り扱いや、相続人としての地位との関係についても、正確に理解しておく必要があります。

「遺留分」とは——相続人に最低限保障された取り分

遺留分とは、被相続人の財産処分の自由と、相続人の生活保障・潜在的持分の顕在化との調和を図るため、法律上保障された最低限の相続財産の取り分です(民法1042条)。兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・直系尊属)が持ちます。

  • 相続人が配偶者のみ、または子のみ、または配偶者と子の場合:遺留分の合計は遺産の2分の1
  • 相続人が直系尊属のみの場合:遺留分の合計は遺産の3分の1
  • 兄弟姉妹には遺留分はない
  • 遺留分を侵害する遺言・贈与は有効だが、遺留分権利者は「遺留分侵害額請求」ができる

相続開始前 vs 相続開始後——手続きの根本的な違い

相続開始前の放棄(父が存命中)

家庭裁判所の許可審判が必要

被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に審判申立てを行い、許可を得る必要があります。申立費用は収入印紙800円+予納郵便切手。申立人の戸籍謄本と被相続人の戸籍謄本を添付します。

民法1049条①/家事手続別表1⑮
相続開始後の放棄(父の死亡後)

遺留分放棄書を送付するだけ

相続が開始した後の遺留分は既に自分に帰属した権利であり、自由に処分できます。裁判所の許可は不要。遺留分を侵害した遺贈・贈与を受けた者に対して、書面(遺留分放棄書)を送付します。

内容証明郵便で送付が望ましい

相続開始前の放棄——裁判所が「合理的理由」を審査する

相続開始前の遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要とされています。これは、放棄者が内容を十分に理解していなかったり、意思に反して放棄させられる危険を防ぐためです。許可の審判では、放棄者の意思確認だけでなく、放棄することに合理的な理由があるかどうかも審査されます。

「合理的な理由」として認められやすい例

  • 既に被相続人から土地・建物等の贈与を受けている(本事例はこれ)
  • 他の相続人と比べて高額の学費や留学費用を出してもらった
  • 多額の借財を被相続人に整理してもらった
  • 事業の資金援助を受けている
⚠ 許可が却下された事例
東京家裁(昭35年)では、夫の発意による妻の遺留分放棄申立てが「配偶者相続権の理念に反する」として却下。大阪家裁(昭46年)では、両親が結婚に反対して娘に署名させたケースが「強度の干渉の結果」として却下されています。本人の自発的な意思と合理的な理由の両方が必要です。

手続きの流れ(相続開始前)

  1. 01
    許可審判申立書を作成する 申立人(放棄する相続人予定者)と被相続人の情報・放棄する具体的な理由を記載します。財産目録(贈与を受けた土地・建物・現預金等)を添付します。
  2. 02
    被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てる 収入印紙800円+予納郵便切手。申立人の戸籍謄本と被相続人の戸籍謄本を添付します。
  3. 03
    審判による許可・却下 許可決定がなされれば遺留分放棄が有効になります。却下された場合は即時抗告が可能です。なお許可後も取消申立てはできますが、当然に取り消されるわけではありません。

相続開始後の放棄——「遺留分放棄書」を作成・送付する

遺 留 分 放 棄 書

〇〇県〇〇市〇〇町二丁目3番地
甲野 二郎様

前略

父甲野太郎は、令和〇年〇月〇日に死亡しましたが、私は、亡甲野太郎の相続については遺留分を放棄しますので、その旨通知いたします。

草々

令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇町一丁目2番地
甲野 一郎㊞
遺留分放棄書の作成ポイント
内容証明郵便で送付することが強く望ましいです。後日「放棄した・していない」という争いを防ぐため、配達証明も取得しておきましょう。また放棄を決める際は、遺贈や生前贈与された財産も含めた遺産全体を把握した上で判断することをお勧めします(民法1046条参照)。

知っておくべき2つの重要ポイント

①放棄後に自分が先に亡くなった場合——代襲相続人への影響

遺留分を放棄した後に放棄者が被相続人より先に亡くなった場合、代襲相続人(放棄者の子)は被代襲者(放棄した本人)が生存していたとすれば取得できた権利以上の権利を取得することはできません。つまり、遺留分放棄の効果は代襲相続人にも及び、代襲相続人も遺留分侵害額の請求はできないと考えられています。

②遺留分を放棄しても「相続人の地位」は失わない

重要な誤解を防ぐために
遺留分を放棄しても、相続人であることには変わりありません。そのため、被相続人の遺言の対象とされなかった財産については、相続人として遺産分割を請求する権利は残ります。「遺留分放棄=すべての相続権の放棄」ではない点に注意が必要です。すべての相続権を放棄したい場合は、相続開始後に「相続放棄」(家庭裁判所への申述)が必要です。

相続開始前後の遺留分放棄——手続きの違いまとめ

比較項目 相続開始前の放棄 相続開始後の放棄
必要な手続き 家庭裁判所への許可審判申立て裁判所の許可必要 遺留分放棄書の作成・送付自由に放棄可
裁判所の関与 必要(被相続人の住所地の家庭裁判所) 不要
費用 収入印紙800円+予納郵便切手 内容証明郵便の費用のみ
合理的理由の要否 必要(審判で審査される)却下リスクあり 不要(既に自分の権利として帰属済み)
相続人の地位 失わない(遺言未対象財産の相続は可能) 失わない(同左)
代襲相続人への影響 放棄の効力が代襲相続人にも及ぶ(遺留分請求不可)要注意 同様
弁護士関与の効果 申立書作成・合理的理由の整理・許可の見通しの判断 放棄書の内容確認・内容証明郵便の作成サポート
相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。

遺産分割・遺言・相続放棄など、相続全般の解説をまとめています

「遺留分を放棄すべきか迷っている」——まずご相談ください

生前贈与の内容・遺産の規模・他の相続人との関係によって、放棄すべきかどうかの判断は変わります。香川・高松市周辺の皆様の遺留分・相続問題、よつば法律事務所が丁寧にサポートします。

※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

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