そのとおりです。長年の貢献に報いるために自宅を贈ったのに、その分だけ遺産分割で不利になるのでは遺言の意味が半減してしまいます。香川の皆様にぜひ知っていただきたいのが、「持戻免除の意思表示」という制度です。そして平成30年の相続法改正で、婚姻20年以上の夫婦にはこの免除が自動的に「推定」されるようになりました。
そもそも何が問題?——「特別受益の持戻し」のしくみ
父が亡くなり、婚姻50年の母と子ども2名(あなたと弟)が相続人。遺言で母に自宅を遺贈。
通常、被相続人から相続人への贈与や遺贈は「特別受益」として扱われ、その金額を遺産に持ち戻して計算します。母が自宅(2,500万円)を遺贈された場合、それを計算上の遺産総額に加えた上で、母の取り分からその2,500万円を差し引くことになります。
自宅の評価額分、母の取り分が減る
遺贈された自宅2,500万円が「もう受け取った財産」として計算上差し引かれるため、他の遺産からの取得分が大幅に減少します。
自宅は「別枠」。残り遺産から法定相続分通り取得できる
自宅の遺贈を持ち戻し計算の対象から外すことで、母は自宅に加え、残りの遺産についても相続分に応じた取得が可能になります。
平成30年改正の新ルール——婚姻20年以上なら「自動的に推定」される
平成30年の民法(相続法)改正により、以下の要件をすべて満たす場合、持戻免除の意思表示があったものと推定されます(民法903条4項)。令和元年7月1日以降の遺贈・贈与に適用されます。
推定規定の適用要件(3つすべて必要)
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①遺贈または贈与の時点で、婚姻期間が20年以上であること 被相続人の死亡時ではなく、遺贈・贈与をした「時点」で20年に達していることが必要です。贈与後に20年になっても遡及適用はありません。
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②対象が「居住用不動産」(建物またはその敷地)であること 居住用不動産の購入資金の贈与は原則対象外です。ただし実質的に居住用不動産の贈与と評価できる場合は適用できることもあります。遺贈・贈与の時点で居住していなくても「近い将来居住の目的があった」と認められれば要件に該当する余地があります。
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③被相続人が異なる意思表示をしていないこと あくまでも「推定」規定です。被相続人が「持戻しをする」と明示していた場合は推定が覆ります。
婚姻50年・居住用自宅への遺贈・反対の意思表示なし——3要件をすべて満たすため、持戻免除の意思表示があったと推定されます。遺産分割協議書に特別な記載がなくても、この推定のもとで分割を進めることができます。
遺産分割協議書の作成——記載のポイント
相続人全員が持戻免除の意思表示があったことに同意している場合、遺産分割協議書に必ずしもその旨を記載する必要はありません。誰がどの遺産を取得するかを記載した通常の協議書で足ります。
「相続人全員は、被相続人〇〇が妻Aに遺贈した下記不動産について、被相続人〇〇が特別受益の持戻免除の意思表示をしたことを確認する。」
→ 相続人間で持戻免除の有無に争いがある場合や、後日の紛争予防のために追記することが考えられます。
持戻免除により配偶者の取得額が増えた結果、他の相続人の遺留分を侵害する場合があります。その際は遺留分侵害額請求の対象となりますので、遺産の構成によっては事前に弁護士に確認することをお勧めします。
持戻免除「あり」と「なし」——遺産分割への影響まとめ
| 比較項目 | 持戻免除なし(原則) | 持戻免除あり(推定・明示) |
|---|---|---|
| 配偶者の取得額 | 遺贈額分が相続取得額から差し引かれる取り分が減る | 遺贈は別枠。残り遺産からも法定相続分を取得できる保護される |
| 遺言者の意思の実現 | 遺贈の効果が遺産分割で実質的に相殺される | 「老後の生活保障」という遺言者の意図がそのまま実現意思尊重 |
| 推定規定の適用 | 婚姻20年未満・非居住用不動産など要件を満たさない場合 | 婚姻20年以上+居住用不動産+令和元年7月以降の遺贈・贈与民法903条4項 |
| 協議書への記載 | 通常の遺産分割協議書でよい | 原則記載不要。争いがある場合は確認条項を追記 |
| 遺留分との関係 | 影響が出にくい | 配偶者の取得増が他の相続人の遺留分を侵害する場合あり要確認 |
| 10年ルールとの関係 | 10年経過後は具体的相続分(特別受益考慮)が使えなくなる | 同様に早期の遺産分割手続きが重要 |
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「配偶者の取り分を守りたい」——遺産分割前にご相談を
持戻免除の推定規定が使えるか、遺留分の問題はないか、協議書に確認条項が必要かどうか——これらは個別の事情によって判断が変わります。高松市周辺の皆様の大切な相続問題、よつば法律事務所がサポートします。