2026.04.07
コラム

遺産の一部分割

投稿者:二川伸也

不動産の分割でもめている。預金だけ先に分けることはできる?一部分割を弁護士が解説|よつば法律事務所

Partial Estate Division

不動産でもめているうちに、預金と株式だけ先に相続できますか?
「一部分割」という選択肢

遺産のすべてを一度に分けなければならないわけではありません。まとまった部分だけ先に分割することは、法的に認められています。

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。

「不動産の分け方は意見が分かれているけれど、預金と株式についてはすでに合意できている。これだけ先に手続きを進めてもいいの?」というご相談は、相続の場面でよく耳にします。

結論から申し上げると、遺産の一部だけを先に分割する「一部分割」は、法律上認められています。ただし、きちんとした書面を整え、残りの財産をどう扱うかも明確にしておかないと、後でトラブルが生じることがあります。

一部分割とは──遺産分割は「一回限り」ではない

民法906条・907条は、遺産分割は遺産の種類・性質、各相続人の事情など一切を考慮して行うものと定めています。そのため、「分割は遺産全体について一括で行わなければならない」とも読めますが、実務上は遺産の一部だけを先行して分割すること(一部分割)は可能とされています。

一部分割が認められる根拠として、遺産の対象自体は流動的であり(後から発覚する財産もある)、また相続税の支払いのために特定の不動産だけ先に売却するといった現実的なニーズがあるためです。一部分割は遺産を漠然と分けるのではなく、分割する部分を残余部分から明確に切り分けることが必要です。

今回の事例のイメージ

今回まとめて分割

預金(全口座)

株式
後日、別途協議

不動産⑴

不動産⑵

一部分割協議書を作成するときの3つのポイント

  • 一部分割であることを明記する──今回の分割が遺産全体ではなく、特定の財産のみを対象としていることを書面上で明確にします。
  • 未分割財産の取り扱いを明示する──分割しない不動産については「未分割であることを確認し、後日別途協議する」旨を明記します。また、今回の一部分割の結果を、残余財産の分割に「斟酌しない」のか「考慮する」のかも合意して記録しておくことが重要です。
  • 相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する──相続人の真意と人違いでないことを明らかにするため、登録済の印鑑(実印)での押印と印鑑登録証明書の添付が必要です。

実務では、「一部分割の結果を残余財産の分割に斟酌しない」と明記するケースが一般的です。こうすることで、先の合意をめぐる紛争が後から蒸し返されることを防ぎ、残余財産の協議をゼロベースで行えます。

一部分割後に注意すること──対抗要件と残余財産の分割

法定相続分を超える部分は登記が必要

民法899条の2第1項により、遺産分割によって法定相続分を超える部分を承継した場合は、登記・登録などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗できません。預金や株式の名義変更、不動産の相続登記は速やかに行いましょう。

残余財産の分割でもめた場合

一部分割後、不動産をめぐる協議がまとまらない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停・審判の申立てという手段があります。なお、大阪高裁令和元年7月17日決定では、先行する一部分割が不均衡であった場合に、残余財産を法定相続分で分割することで足りるとした例もあります。

⚠️ 注意:一部分割を「とりあえず」の気持ちで進めると、不動産の分割協議で相手方が不利な取り扱いをされたと感じ、感情的な対立が深まるケースがあります。一部分割協議書の内容は、弁護士に確認してもらってから署名することをお勧めします。

自分で進める場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 自分で対応 弁護士に依頼
一部分割の可否の判断 合意できる財産の見極めが難しい 紛争リスクを見越して対象財産をアドバイス
協議書の作成 記載漏れで後々の紛争原因になる恐れ 斟酌条項・対抗要件など網羅した書面を作成
残余財産の方針整理 後の協議で揉めやすい 残余財産の分割見通しも含めて戦略的に設計
名義変更・登記手続き 銀行・証券会社の書類が複雑 司法書士等と連携して手続きをサポート
不動産をめぐる今後の交渉 感情的になりやすく難航しがち 代理人として調停・審判も対応
費用(目安) 実費のみ(印鑑証明取得費など) 着手金+報酬金(事案により異なります)

高松市周辺でも、相続財産の中に不動産と預金が混在していて、不動産の分割だけが長引くというケースはよくあります。「動かせる部分だけでも先に動かしたい」というお気持ちはもっともですが、書面の内容を誤ると後のトラブルを招きます。お一人で悩まず、ぜひ早めにご相談ください。

相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。

遺産分割でお悩みなら、よつば法律事務所へ

「不動産だけもめている」「先に動かせる財産だけ整理したい」「一部分割の協議書を作りたい」──どのようなご状況でも、まずは現状を整理するところからお手伝いします。

よつば法律事務所では、香川・高松の弁護士として、遺産分割に関するあらゆるご相談に対応しています。ご家族の状況に合わせた解決策をご提案いたします。

※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

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