2026.04.06
コラム

判断能力がない相続人

投稿者:二川伸也

認知症の母が相続人に。成年後見人を選任して遺産分割を進める方法|よつば法律事務所

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
Dementia & Adult Guardianship

認知症の母が相続人に。
判断能力がない人がいても
成年後見人を選任すれば遺産分割できます

後見・保佐・補助の違い、申立ての流れ、急を要する場合の財産管理者選任まで、弁護士が解説します。

「父が亡くなりましたが、母は認知症で老人ホームに入居しており、自分がどこにいるかも分からない状態です。このような場合、遺産分割はどうすればよいのでしょうか」——認知症の家族を抱えながら相続手続きを進めなければならない方は、高松市周辺でも多くいらっしゃいます。

判断能力のない方と遺産分割協議を行っても、その協議は法律上無効となります。まず「成年後見人」を選任し、後見人が本人に代わって協議に参加する形をとる必要があります。

判断能力がない人と協議しても無効。まず成年後見人の選任が必要です

遺産分割は財産の処分に関する法律行為であり、これを行うには判断能力が必要です。認知症などにより判断能力を欠く状態の方が協議に署名しても、その協議は無効となります。

そのため、まず家庭裁判所に「後見開始の審判」を申立て、成年後見人を選任してもらうことが必要です。選任された成年後見人が本人を代理して、他の相続人と遺産分割協議を行います。

認知症の症状・程度によって制度が3種類あります

認知症の症状や程度は人によって異なります。判断能力の程度に応じて、法律上は以下の3つの制度が用意されています。

最も重い|後見

後見開始

判断能力を欠く常況にある方が対象。成年後見人が包括的な代理権を持ち、遺産分割も代理できる。

中程度|保佐

保佐開始

判断能力が著しく不十分な方が対象。保佐人は家庭裁判所から代理権を与えられた場合のみ遺産分割を代理できる。

軽度|補助

補助開始

判断能力が不十分な方が対象。補助人も代理権が付与されなければ遺産分割の代理はできない。

📌 ポイント:保佐人・補助人は、家庭裁判所から別途代理権を付与されなければ遺産分割を代理できません(民法876条の4・876条の9)。申立ての際に代理権付与も合わせて求めることが重要です。

後見開始から遺産分割までの手順

1

家庭裁判所への申立て

後見開始審判の申立て

成年被後見人となるべき者の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立て。申立人は本人・配偶者・四親等内の親族・検察官等。申立費用は収入印紙800円(申立手数料)+2,600円(登記手数料)、予納郵便切手、鑑定料が必要。

2

審判確定後

成年後見人が遺産分割協議に参加

選任された成年後見人が本人(認知症の相続人)を代理して他の相続人と協議を行う。協議書の署名欄には「甲野花子成年後見人乙野夏男」と記載し、後見人の実印を押印する。

3

協議書への添付書類

遺産分割協議書の作成・各種手続き

協議書に戸籍謄本等・各相続人および成年後見人の印鑑登録証明書・後見登記事項証明書(または後見人選任審判書・確定証明書)を添付して、不動産の相続登記・預貯金の払戻し等を行う。

申立てに必要な主な書類

  • 本人の戸籍謄本・住民票または戸籍附票
  • 成年後見人候補者の住民票または戸籍附票
  • 本人の診断書(家庭裁判所所定の様式)
  • 本人情報シート(可能な限り)
  • 成年後見登記がされていないことの証明書(法務局発行)
  • 本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書・預貯金残高証明書等)
💡 急いで分割しなければならない場合——財産管理者の選任

後見開始の審判が確定するまでには一定の時間がかかります。相続税の申告期限が迫っているなど急迫な事情がある場合は、後見開始申立てと同時またはその後に「審判前の保全処分」として財産管理者の選任を申立てることができます(家事事件手続法126条第1項)。

なお、財産管理者が民法103条に定める行為以外の法律行為を行う場合は、別途家庭裁判所の許可が必要です。近年は後見開始・後見人選任までの期間が短縮されているため、財産管理者が必要となる場面は限られています。

判断能力のない方が署名・押印した遺産分割協議書は法律上無効です。「署名さえもらえれば大丈夫」と思って進めてしまうと、後から協議全体が無効とされるリスクがあります。認知症の家族がいる場合は、必ず成年後見人の選任を経てから手続きを進めてください。

自分で進める場合と弁護士に依頼する場合の比較

成年後見の申立ては、診断書の取得・後見登記の確認など複数の手続きが必要で、慣れない方には負担が大きい手続きです。参考に以下の表をご覧ください。

比較項目 自分で手続き 弁護士に依頼
制度の選択 後見・保佐・補助のどれが適切か判断が難しい 症状・程度を踏まえた適切な制度を提案
代理権の付与 保佐・補助の場合に代理権付与が必要か見落としやすい 遺産分割に必要な代理権付与を合わせて申立て
診断書・書類 所定書式の診断書取得・後見登記証明の手配が複雑 必要書類の収集・確認を一括サポート
急を要する場合 財産管理者選任の手続きを知らずに対応が遅れることも 申立てと同時に保全処分の申立ても対応
協議書の作成 後見人代理の記載方法が分かりにくい 法的に有効な協議書を正確に作成
費用 申立費用(印紙計3,400円+鑑定料等)のみ 弁護士費用が別途必要(内容により異なる)
📋
相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。

まずは、よつば法律事務所にご相談ください

「認知症の親が相続人になっており遺産分割が進められない」「後見人の選任に時間がかかると困る」「相続税の申告期限が迫っている」——そのようなお悩みは、ぜひ弁護士にご相談ください。後見開始の申立てから遺産分割協議書の作成まで、よつば法律事務所がトータルでサポートいたします。

よつば法律事務所 〒760-0028 香川県高松市鍛冶屋町3-1 香川三友ビル2階
TEL:087-802-2936
☎ 電話でご相談する
※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

コラム一覧へ戻る

NEW

カテゴリ

サブカテゴリ

ARCHIVE