「夫が亡くなり、相続人は私(妻)と15歳の長男の2人。私が子どもの代わりに遺産分割の手続きをすればよいのでは?」——そう思われる方も多いのですが、実はこのケースでは、親権者である母が子どもを代理して遺産分割協議を行うことは法律上できません。
母と子が同じ遺産を分け合う立場にある場合、親権者が子を代理すると「利益相反」が生じるからです。高松市周辺でもこのようなご相談は多く、手続きを誤ると遺産分割協議が無効になるリスクもあります。このコラムでは、正しい手続きをご説明します。
親権者と子が同じ相続人のとき、親権者は子を代理できません
民法826条は、親権者とその子の利益が相反する行為については、親権者は子のために特別代理人を選任するよう家庭裁判所に求めなければならないと定めています。
遺産分割協議は、母と子が共に相続人として遺産を取得するため、客観的に利害が対立する行為(利益相反行為)に当たると判断されています(最高裁判決・昭和49年7月22日)。母が有利な分け方をすれば子の取得分が減り、子が有利な分け方をすれば母の取得分が減るという構造があるためです。
特別代理人が必要なケース・不要なケース
親権者と子が共に相続人のとき
母と未成年の子が両方相続人として遺産分割協議に参加する場合。子が複数いる場合はそれぞれの子に特別代理人が必要。
親権者が相続放棄をしたとき(子1人の場合)
母が相続放棄を行えば母は相続人から外れるため、利益相反が解消される。子1人であれば母が法定代理人として手続きができる。
特別代理人選任から遺産分割までの手順
申立てに際し、どのような内容で分割するかを示す「遺産分割協議書案」を添付する必要がある。協議書案は裁判所の審査対象となるため、未成年者の利益を不当に侵害しない内容であることが求められる
子の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立て。申立人は親権者または利害関係人。申立費用は収入印紙800円と予納郵便切手。審判が確定するまで協議は待機する
選任された特別代理人が子の利益を守る立場で協議に参加する。協議書の署名欄には「相続人〇〇特別代理人〇〇」と記載し、特別代理人の実印を押印する
相続人(親権者)と特別代理人の印鑑登録証明書、特別代理人選任審判書を添付して、不動産の相続登記・預貯金の払戻し等を行う
申立てに必要な主な書類
- 子の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 親権者の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 特別代理人候補者の住民票または戸籍附票
- 遺産分割協議書案(利益相反に関する資料)
- 利害関係人からの申立ての場合は利害関係を証する資料
特別代理人は、子の利益を最優先に考えて協議を行う義務(善管注意義務)を負います。申立ての際に提示された協議書案の内容が未成年者にとって非常に不利益であった場合、その案どおりに協議を成立させても特別代理人は損害賠償責任を問われることがあります(広島高裁岡山支部判決・平成23年8月25日)。
協議書案の内容が子にとって適切かどうかについても、あらかじめ弁護士に確認しておくことをお勧めします。
自分で進める場合と弁護士に依頼する場合の比較
特別代理人の選任を要する相続手続きは、申立書類の準備から協議書案の内容確認まで、複数の注意点があります。高松市周辺で同様のケースでお悩みの方は、以下の表もご参考ください。
| 比較項目 | 自分で手続き | 弁護士に依頼 |
|---|---|---|
| 利益相反の判断 | 特別代理人が必要かどうか判断が難しい | 状況を確認し、必要性を正確に判断 |
| 協議書案の作成 | 子の利益を適切に保護した内容かどうか分かりにくい | 未成年者の法定相続分を踏まえた適切な案を作成 |
| 申立書の準備 | 書類収集・記載内容の確認に手間がかかる | 申立書から添付書類まで一括サポート |
| 子が複数の場合 | 何人に特別代理人が必要か判断が難しい | 子ごとの対応方針を整理してアドバイス |
| 相続放棄との比較 | 特別代理人選任と相続放棄のどちらが適切か分からない | 家族構成・財産内容を踏まえた最適な方法を提案 |
| 費用 | 申立費用(印紙代800円+郵便切手)のみ | 弁護士費用が別途必要(内容により異なる) |
まずは、よつば法律事務所にご相談ください
「未成年の子がいて遺産分割が進められない」「特別代理人の候補者が見つからない」「協議書案の内容が適切か不安」——そのようなお悩みは、ぜひ弁護士にご相談ください。特別代理人選任の申立てから遺産分割協議書の作成まで、よつば法律事務所がトータルでサポートいたします。
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