2026.04.04
コラム

死後事務委任と相続人の権利

投稿者:二川伸也

死後事務委任契約があっても相続人は何もできない?権利と対抗手段を弁護士が解説|よつば法律事務所

本コラムのレイアウト構成にはAIの支援を導入しています。皆様に複雑な法律問題を視覚的に分かりやすくお伝えするための試みです。
Posthumous Mandate & Heir's Rights

父が結んだ死後事務委任契約。
相続人の私は本当に何もできないのか?

200万円を預けた団体に葬儀も解約も委任済み——そんな場合でも、相続人には法律上の権利と対抗手段があります。弁護士が丁寧に解説します。

Q
死後事務委任契約があれば、相続人は葬儀も老人ホームの解約も一切できないのでしょうか?
A
いいえ。契約は有効でも相続人の権利が消えるわけではありません。葬儀の主宰権や解約金の受領権など、相続人として行使できる権利は残っています。

「亡くなった父が団体Aと死後事務委任契約を結んでいた。葬儀も老人ホームの解約も全部Aに委任してあり、200万円まで預けてある。私(相続人)はもう何もできないのか——」

このようなご相談は、高松市周辺でも増えてきています。死後事務委任契約は確かに法的に有効ですが、それは相続人の権利をすべて奪うものではありません。本記事では、相続人の立場から「できること」と「解除の可否」について整理します。

死後事務委任契約とは——有効だが「万能」ではない

死後事務委任契約とは、委任者が受任者に対し、自己の死後に生じる葬儀・債務の支払い・施設の解約などの事務を生前に委任しておく契約です。

民法653条は「委任者の死亡によって委任契約は終了する」と定めていますが、最高裁平成4年9月22日判決は、死後事務委任契約は委任者の死亡後も効力を有する旨の合意を含むものとして、その有効性を認めています。

⚠️ 「二重構造」の問題に注意
死後事務委任契約が有効でも、相続開始により被相続人の権利義務はすべて相続人に承継されます(民法896条)。その結果、受任者と相続人の双方が同じ事務の処理権限を持つという「二重構造」が生じます。
死後事務委任契約の受任者
葬儀・火葬の手配
施設の解約・解約金受領
債務の弁済
預託金200万円の管理
相続人(民法896条による承継)
祭祀主宰者としての葬儀主宰
老人ホーム解約金の受領
債権・債務の承継
委任者の地位の承継

↑ 利害が衝突する場合がある

相続人が「できること」の整理

① 葬儀を自ら執り行うことは可能

葬儀を行う権限は法律に明文規定がなく、慣習・条理によって判断されます(甲府地判昭31年)。実際上は祭祀主宰者(民法897条)が葬儀方法の判断権を持つことが多く、相続人が差配して葬儀を行うことは可能です。受任者は条理上これを妨げることができないとも解されます。

② 老人ホームの解約金など財産上の権利行使も可能

老人ホームの解約に関する権利義務は相続人に承継されます。したがって相続人が老人ホームの解約金を直接受領することも可能です。

③ 遺言との関係に注意

死後事務委任契約と遺言の内容が抵触する場合(例:遺言で特定財産を受遺者Bに与えるとしているのに、委任契約では受任者に給付するとしている場合)は権利関係が複雑になります。契約作成時に「遺言に別の定めがある場合には遺言による」という条項を入れておくことが望まれます。

相続人による解除——原則は難しいが「特段の事情」があれば可能

相続人は委任者の地位を承継するため、理論上は解除権を行使できそうにも思えます。しかし東京高裁平成21年12月21日判決は、次のような判断を示しています。

📌 東京高裁平成21年12月21日判決の趣旨
死後事務委任契約は、「特段の事情がない限り、委任者の地位の承継者による解除を許さない」合意をも包含する趣旨と解すべきとした。特段の事情とは——契約内容が不明確・実現困難、または承継者にとって履行負担が加重であるなど、履行させることが不合理と認められる場合。

「特段の事情」の具体的な検討ポイント

  • 預託金200万円で葬儀・債務の支払いを賄えるか(実現可能性)
  • 死後事務の報酬を相続人に負担させることの適否(履行負担の加重)
  • 祭祀主宰者である相続人が自ら葬儀を執り行う意向がある(条理上の優先)
  • 契約内容が著しく不明確で履行の見通しが立たない

解除する場合の手続き

  1. 1
    特段の事情があるか確認・弁護士に相談
    解除が認められるかどうかは個別事情による法的判断が必要です。まず弁護士にご相談ください。
  2. 2
    相続人全員で解除の意思表示(書面・内容証明郵便)
    解除の意思表示は相続人全員から受任者への書面によって行います。内容証明郵便で通知するのが確実です。
  3. 3
    預託金・保管金員の返還を請求
    解除後、受任者は預託金(費用・報酬を控除した残余)を遺言執行者または相続人に返還しなければなりません。
⚠️ 法定単純承認に注意
受任者が相続人の意向にかかわらず相続債務を弁済した場合、相続人が意図せず「法定単純承認」(民法921条1号)の効果が生じるリスクがあります。相続放棄を検討している場合は、早急に弁護士にご相談ください。

自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較

比較項目 ご自身で対応 弁護士に依頼
契約内容の確認 法的有効性・問題点の判断が難しい
見落としのリスク
契約の有効性・解除可否を正確に判断
安心
葬儀の主宰 受任者との対立が生じやすい 法的根拠をもとに交渉・対応
スムーズに解決
解除の判断 特段の事情の有無の判断が困難
誤りやすい
裁判例をふまえた判断と解除通知作成
確実
預託金の返還請求 受任者が拒否した場合の対処が難しい 内容証明・交渉・法的手続きまで対応
相続放棄との調整 単純承認リスクを見落とす危険
大きなリスク
相続放棄の期限管理と連動した対応
安全に進められる
費用 内容証明郵便の実費程度 弁護士費用が発生(内容により異なります)

死後事務委任契約は、相続人と受任者の間でトラブルになりやすいテーマです。「契約があるからもう手遅れ」とあきらめる前に、香川の皆様はぜひ一度ご相談ください。

📋
相続の全体像については、こちらのまとめページをご覧ください。 死後事務委任契約以外にも、遺産分割・遺言・相続放棄など相続に関するテーマを網羅的にご案内しています。

「死後事務委任契約があって困っている」——まずはご相談を

「葬儀を自分たちで執り行いたい」「預託金を取り戻したい」「相続放棄を考えているのに受任者が勝手に動いている」——こうしたお悩みは、法的な整理が必要です。

高松市を拠点とするよつば法律事務所では、死後事務委任契約をめぐる相続人側のご相談にも丁寧にお応えします。お気軽にお電話ください。

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※ 本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。また、掲載内容は本コラム作成時点の情報に基づくものであり、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。
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