賃貸物件の相続
相続した賃貸物件、大家の地位はどうなる?
賃借人への対応と手続きを弁護士が解説
高松市・よつば法律事務所|弁護士による相続コラム
故人がアパートや賃貸マンションを経営していた場合、相続人は突然「大家」としての立場を引き継ぐことになります。賃借人への対応、賃料の受け取り方、経営を続けるかどうか——考えるべきことは山積みです。
このコラムでは、賃貸物件を相続した際にやるべき手続きを、ケース別にわかりやすく整理します。
- 📬 賃貸人の地位が誰に承継されるかの基本ルール
- 📄 賃借人への通知の仕方と注意点
- 🏚 アパート経営をやめたい場合の対処法
- ⚖ 相続人全員が放棄した場合に必要な法的手続き
賃貸人の地位は誰が引き継ぐのか
賃貸人(大家)の地位は、相続によって相続人に承継されます(民法第896条)。通常は、遺産分割協議を経て賃貸物件の所有権を取得した相続人が、賃貸人の地位も併せて引き継ぐことになります。
遺産分割が成立するまでの間に発生した賃料は、各相続人がそれぞれの相続分に応じて取得します(最高裁平成17年9月8日判決)。後から遺産分割をしても、その配分には影響しません。実務上は、分割協議成立後に相続人間で清算することが一般的です。
賃貸人変更通知が必要な理由
賃貸人が変わっても、法律上は自動的に契約関係が新賃貸人に引き継がれます。ただし、賃借人には誰が新しい大家なのかが分かりません。賃料の振込先、連絡先などを速やかに伝えるためにも、賃貸人変更通知書を郵送することが重要です。
- 新賃貸人の氏名・住所を明記する
- 賃貸借契約の内容は従前どおりである旨を伝える
- 銀行振込で賃料を受領している場合は新口座を指定する
- 可能であれば、相続登記後の登記事項証明書の写しを添付する
- 可能であれば、新賃貸人名義の賃貸借契約書に書き換える
アパート経営をやめたい場合——賃貸借契約終了の申入れ
後継者がおらず、アパート経営を続けることが困難な場合は、賃借人に対して賃貸借契約終了の申入れをすることができます。ただし、これはあくまで「お願い」であり、賃借人に応じる義務はありません。
手続きの流れ
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1賃貸借契約書を確認する 契約期間・更新条件・解約予告期間などを把握する。期間中の一方的な解約は原則できない。
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2賃借人と協議する 廃業の事情を丁寧に説明し、合意解約に向けて交渉する。
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3賃貸借契約終了申入書を送付する 書面で正式に申入れを行う。賃借人が承諾すれば合意解約が成立する。
-
4退去・明け渡しの日程を調整する 敷金の精算・原状回復の範囲についても書面で確認する。
賃貸人側の事情だけでは、借地借家法第28条により正当事由がない限り更新拒絶はできません。賃借人が退去に同意しない場合は長期化するケースもあります。高松市周辺で賃借人対応にお困りの場合は、早めに弁護士へご相談ください。
相続人全員が放棄した場合——相続財産清算人の選任
赤字経営のアパートなど、誰も相続したくない場合に全員が相続放棄することがあります。その場合、賃貸物件の管理が宙に浮いてしまうため、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申立てる必要があります(民法第952条)。
配偶者と子が放棄しても、両親・兄弟姉妹が放棄しなければ「全員放棄」にはなりません。次順位の法定相続人(民法887条・889条)全員の相続放棄申述受理証明書が必要です。
申立てに必要な主な書類
- 被相続人の出生〜死亡までの全戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)
- 被相続人の父母・子・兄弟姉妹など各関係者の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 財産を証する資料(不動産登記事項証明書・預貯金残高証明書等)
- 申立人の利害関係を証する資料
- 相続人全員の相続放棄申述受理証明書
- 相続財産清算人候補者の住民票(候補者がいる場合)
収入印紙800円+予納郵便切手(各裁判所による)+管理費用の予納が必要です。申立先は、相続開始地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法第203条)となります。
自分で対応する場合と弁護士に依頼する場合の比較
賃貸物件の相続は、通常の相続よりも関係者(賃借人・金融機関・管理会社等)が多く、手続きが複雑になりやすいです。香川の皆様が安心して対応できるよう、弁護士のサポートが効果的な場面をまとめました。
| 対応場面 | 自分で対応 | 弁護士に依頼 |
|---|---|---|
| 賃貸人変更通知の作成 | 書式に沿えば自分で可能 | 正確な書面を速やかに作成 |
| 賃借人との合意解約交渉 | 長期化・感情的対立のリスク | 弁護士が窓口となり円滑に交渉 |
| 相続放棄の手続き | 3か月の期限・書類漏れのリスク | 期限管理・書類作成を一括対応 |
| 相続財産清算人の申立て | 添付書類が多く複雑 | 申立書・添付書類を全面サポート |
| 賃料収入の精算・清算 | 相続人間のトラブルになりやすい | 公平な清算案を提示・調整 |
| 費用 | 実費のみ | 着手金・報酬金が発生 |
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