2026.04.01
コラム

親亡き後の問題と信託活用

投稿者:二川伸也

「自分が死んだ後、障害のある子が生活に困らないだろうか」——こうした不安を抱えながら相談にいらっしゃる親御さんは、高松市周辺でも少なくありません。

これは「親亡き後問題」と呼ばれ、障害のある子を持つ親が共通して抱える切実な悩みです。この記事では、信託を活用して親亡き後の子の生活を守る方法について解説します。

成年後見制度だけでは不十分なケースがある

障害のある子の財産を守る手段として、まず思い浮かぶのが成年後見制度です。しかし、この制度は判断能力が低下した人を対象とするものであり、難病や重度の身体障害があるだけでは利用できない場合があります。

また、成年後見制度を利用できたとしても、障害者本人による財産の処分・散逸リスクを完全には防げません。一度失われた財産を取り戻すことは容易ではないのです。

そこで注目されているのが、信託を活用した親亡き後対策です。

信託を使うとどう解決できるのか

信託とは、財産を信頼できる人(受託者)に預け、決められた目的に従って管理・給付してもらう仕組みです。障害のある子を受益者とする信託を設定することで、次のようなメリットがあります。

  • 判断能力に関わらず、障害のある子も受益者になれる
  • 財産の所有権を受託者に移すため、本人による財産の散逸リスクを防げる
  • 子が死亡した後の残余財産の行方も、あらかじめ指定しておける
  • 受益者代理人を設けることで、子の利益をより確実に守れる

遺言信託が多く使われる理由

生前に信託契約を結ぶ方法(遺言代用信託)もありますが、親亡き後問題では遺言信託が多く活用されます。親自身が元気なうちは自分で子の世話をしたいという思いがあり、自分の死後に効力が生じる遺言信託で十分なことが多いためです。

ただし、遺言信託では受託者として指定された方に就任義務はありません。生前に受託者となる方とよく話し合い、内諾を得ておくことが大切です。

成年後見制度との併用も検討を

信託で行えるのは、基本的に信託財産の管理と生活費の交付に限られます。障害のある子の生活全般を支えるためには、信託と後見制度を組み合わせることが有効です。

役割 担う仕組み 内容
財産の管理・給付 信託(受託者) 生活費の交付・財産の運用管理
身上監護・日常事務 任意後見人 医療・介護の手続き、日常生活のサポート
子の権利の保護 受益者代理人 子の意思確認・信託事務への反映

例えば、財産管理は信託で行いつつ、身上監護に関する法律行為や日常の事務処理は任意後見人に委任するという形が考えられます。任意後見人は、受託者から交付される生活費をもとに子の生活を支えます。

特定障害者扶養信託(贈与税の非課税制度)

子が重度の心身の障害者である場合、信託銀行等に金銭を信託するときに贈与税が非課税になる「特定障害者扶養信託」という制度があります(相続税法21条の4)。信託銀行等では「特定贈与信託」の名称で提供されています。

対象者 非課税限度額
特別障害者(重度の心身障害者) 6,000万円
中軽度の知的障害者・精神障害者(障害等級2〜3級) 3,000万円

以前は重度の障害者のみが対象でしたが、現在は中軽度の知的障害者や精神障害者にも対象が拡大されています。

受託者の選び方と信託業法の注意点

信託の受託者には、家族や専門職(弁護士など)がなることができます。ただし、報酬を得て継続的に受託者を務めるには信託業法上の許認可が必要であり、無許可で報酬を受け取ることはできません。

そのため、実務上は家族が受託者となるケースが多く、弁護士などの専門職はコーディネートや信託監督人・受益者代理人として関与するかたちが一般的です。

まとめ

  • 成年後見制度だけでは、判断能力に問題がない障害者には対応できない場合がある
  • 信託を設定することで、財産の散逸リスクを防ぎつつ生活費を継続的に給付できる
  • 親亡き後問題には「遺言信託」が多く活用される
  • 信託と任意後見制度を組み合わせることで、財産管理と身上監護の両面をカバーできる
  • 受益者代理人を設けることで、子の利益をより確実に守れる
  • 重度・中軽度の障害者向けに、贈与税が非課税になる「特定障害者扶養信託」がある

「自分が亡くなった後も、子どもが安心して暮らせるようにしたい」——そのお気持ちに応えるための手段は複数あります。香川の皆様のご家族の状況に合った最善の方法を、弁護士と一緒に考えていきましょう。

高松市・香川県で親亡き後問題や相続についてお悩みの方は、ぜひよつば法律事務所にお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。具体的なご事情については、弁護士にご相談ください。

コラム一覧へ戻る

NEW

カテゴリ

サブカテゴリ

ARCHIVE